まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

吸血鬼になったキミは永遠の愛をはじめる(5)

ストーリー
心を通わせ、恋人同士になった綾音と詩也に、いち子からまさかのNG宣言。
交際を隠すため、二人は周囲に「つきあってない」と言い張る羽目に。
そんな中、バレンタインデーに行われる公演の演目は『ロミオとジュリエット』で……。



ようやく想いを伝え合い、晴れてカップルとなった綾音と詩也の、恋人として初めて過ごす冬の日々を描いた短編形式の1冊。
バレンタインデーからホワイトデー、周りにつきあっていることを隠しながらの甘やかで純な毎日に、きゅんきゅんして仕方ありません。
雫や理歌といったサブキャラ陣も恋に本気を出しはじめて、ここからがさらに本番! というところで……大ショック……。


告白のクリスマスから、年越しを経て、バレンタインデーとホワイトデー、そして卒業式へ。
つきあいはじめのふたりの日々は、もういかにも幸せいっぱいです、という感じで、見ていてニヤニヤが止まらなくなっちゃうくらい。
いち子女史に交際禁止を告げられて、周りの人から隠れてつきあうことになってしまったわけですが、秘密を共有することで逆に燃え上がっちゃってますね。
夜、理歌がお風呂に入っている間だけの電話とか、密かなメールのやりとりとか、最高でした。なんかもう、綾音も詩也も可愛すぎる!
初詣に行ったときに、綾音が詩也のことを、ずっと頼もしくて爽やかだと思っていた一方で、詩也は綾音のことを、エロくてエロくて自制心を抑えるのに必死だ、なんていう風に思っていたというのも、いかにも思春期の男女らしくて笑ってしまいました。
いやいや、毎度ながら、野村先生はどうしてこんなに微笑ましくて素敵なカップル像を描くことができるのでしょうか……。


バレンタインデーの演目は『ロミオとジュリエット』。そして、ホワイトデーは役柄を入れ替えての『ドラキュラ』リバイバル公演。
自らの恋のために命を絶ったロミオに対して、吸血鬼である自分はジュリエットと共に死ぬこともできないと、綾音と恋人になった今改めて思い悩む詩也。
そんな詩也に、彼のジュリエットがくれた言葉は、とても彼女らしくて素晴らしい発見でした。
詩也が不老不死である以上、いつかは綾音と別れるときが必ず来る。でも少なくとも今は、こんなにも素敵な女の子が、詩也の隣にいてくれています。
その幸せをかみしめて、永遠ではないかもしれないけれど、一歩一歩、ふたりで愛を紡いでいってもらいたいですね。
さて、固い絆で結ばれた綾音と詩也ですが、凪乃はもちろん、雫や、そしてついに理歌も、自らの恋のために動きだしました。
雫と詩也は何やら過去に因縁があるようでしたし、理歌は綾音にとっても大きな存在ですから、もしかしたら化けるかもしれません。個人的にも理歌が大好きですから、ぜひ頑張ってもらいたいです。
偲のなかなか進まない恋愛模様とか、他にもいっぱい気になることがあって、早く次の巻が読みたい! ……と、言いたいところなのですが……。


あとがきでまさかの発表がされていて、呆然としてしまいました。えっ、嘘でしょう?
5巻で無理やりにまとめるのではなく、元のプロットの通りにお話を進めたくてこうなったというのは、自身の物語を愛している野村先生らしい決断だと思いますし、あとがきでそれを全て書いてくれるところも、作家としての真摯な姿勢が表れているようで、頭が下がる思いです。
でも、やっぱり続きが読みたいです……。私たちの応援も足りなかったのか……ごめんなさい。本当にごめんなさい。
今はただ、「何かの形」に期待を込めつつ、次のシリーズを楽しみに待ちたいと思います。私は野村先生の作品が大好きです。待っています。