まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

黒崎麻由の瞳に映る美しい世界

ストーリー
誰もが気になって仕方ないほどの存在感を持ちながら誰も触れられずにいたクラスメイトの少女・黒崎麻由。
文化祭の準備で麻由と同じ班になった黒井光輝は、ふとした思いつきから彼女に声をかける。
そのささいな会話をきっかけにして、麻由は少しずつクラスの中へと溶けこんでゆくのだが……。



第16回えんため大賞<優秀賞>受賞作品。
誰も近づくことができずにいた無口な女の子と、そんな女の子に声をかけてみた男の子。そのちょっとした出来事をきっかけに、ひとりぼっちで生きていた女の子がみんなと一緒の楽しさや嬉しさを知っていく青春学園ストーリーです。
ミステリアス美少女は正義! 主人公のひと言がきっかけになって、謎に包まれた孤独なヒロインと次第に打ち解けていくさまが丁寧に描かれていてよかったですね。
味付け程度のちょっとしたオカルト要素も、物語をほどよく引き締めていたと思います。


お話の出だしは文化祭から。いやあいいですね、まさに青春のひととき! 特に文化祭の準備ってワクワク感が溢れていますよね!
そんな文化祭の空気に乗って……かどうかは知りませんが、今まで誰もが気にしながらも誰ひとり触れることができずにいた美少女・黒崎に声をかける主人公・黒井。
いやあ、草食系に見えて存外にアグレッシブな少年ではないですか。まあ彼は別に、美少女とお近づきになろうと思って声をかけたわけではないのですが。
でも蓋を開けてみれば、黒崎はただ不器用なだけでとても素直な女の子で、そのまま一番の友達同士……そしてその先は……になったわけですから、ぶっちゃけ声をかけたもん勝ちというところはあったのかも。


黒井だけではなくて、赤城に白石さんといった気のいいメンバーと、ゆっくりではあるものの仲良くなっていく黒崎。
“不気味”とまで言われて、誤解されることも多くて、辛いこともあったけれど……少数ながら黒崎のことを大事に思っている仲間たちに囲まれて過ごす日々は、文化祭が終わってもとても楽しそうでした。
黒崎は表情には気持ちが出にくいけれど、ちょっと油断していると思いの外まっすぐな気持ちを口に出してきたりして、何度も不意打ちされました。くそっ可愛いじゃないか。
中でもやっぱり、いつも隣に黒井がいたことは彼女にとって大きかったですね。今後のふたりの仲がどうなってゆくのか、続きが楽しみです。


イラストははねことさん。地味めの色合いながら黒崎の表情が印象に残るいい表紙イラストですね。
お化け役・黒崎のイラストがマイ・フェイバリット。


美黄川さんをもっと推していきたい。