まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

瑠璃色にボケた日常

瑠璃色にボケた日常 (MF文庫J)

瑠璃色にボケた日常 (MF文庫J)

ストーリー
紺野孝巳は、霊障に悩まされる高校一年生。
校内でも有名な霊能者の少女・有働瑠璃の噂を聞いた孝巳は、彼女が所属する『お祓い研究会』を訪れる。
ところがそこは、『お祓い研究会』ではなく『お笑い研究会』で……。



第8回MF文庫Jライトノベル新人賞<佳作>受賞作品。
読了後にパッと浮かんだ印象としては、完成度が高い作品でした。と言っても完成度とは何かなんてよく分かっちゃいないんですが、お笑いをネタにしているだけあって会話文は小気味良く、一方で幽霊関連の部分では適度にシリアスで、お話全体を見ればバランスよく、きちんとまとまっていたと思います。
幽霊の設定がユニークでしたね。死者の怨念が幽霊になるのではなく、生者が死者の魂に意味付けをすると。なるほどなあ。
幽霊ものというと、どうやって死者の心残りを晴らすかということを思い浮かべがちですが、上記の設定によって、この作品ではむしろ生者が死者へ抱いている気持ちをどうやって晴らしていくかというところに焦点が当てられました。
今まで見たことがない視点からの幽霊ものでしたから、新鮮に感じますね。


ヒロインは有働瑠璃と鴫原翠の2名。どちらも凄腕の霊能者です。
タイトル及び表紙に抜擢されていることや、最初から登場してくるということを鑑みて、おそらく瑠璃の方がメインヒロインの立ち位置なのでしょうが、だとすると相当にヒロインらしくないメインヒロインですね。
翠はギャップ萌え的な部分もあるし、孝巳に対しての態度も思わせぶりだしで、立派にヒロインをやっていると思うのですが、瑠璃の方はほとんどそういう気配がありません。性格や発言もだいぶ個性的ですしね。
霊能者としてもそうです。怨霊を憑けまくっている瑠璃よりも、守護霊2体に守られている翠の方がよほど主人公っぽい。
とはいえ、欠点だらけで突っ込みどころ満載だからこそ、惹かれるものもありますよね。事実、瑠璃はかなり魅力的なキャラになっていると思います。もちろん、ヒロインとしては完璧に近い翠も同じくらい素敵なんですが。


思わぬどんでん返しがあったり、まさかの異能バトルがあったりと、最後まで飽きることなく読ませてくれる作品でした。
瑠璃のことはこれで一段落したわけですが、これからはどんな展開が待ち受けているのでしょうか。恋愛方面も少しずつ進んでいくのかな。
ここまで書いたところであとがきを確認したら、翠について「もう一人のメインヒロイン」と述べられていました。翠にも十分チャンスはあるということですね。
もっとも現状、瑠璃が孝巳に恋をする姿はなかなか想像しがたいものがありますが、もしそのようなことがあるのなら、より楽しい恋愛模様が見られそうな予感がします。
色々な期待を持ちつつ、次の巻を楽しみに待ちたいと思います。


イラストはえれっとさん。この表紙の可愛らしさ、思わず手に取ってしまいたくなること必至。
六黒くんのイラストはしっかり迫力があって良かったです。


世の中が瑠璃のような女の子で溢れていたら、真夏日が嬉しくて仕方なくなるはずなのに。