まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

煉獄姫 五幕

煉獄姫 五幕 (電撃文庫)

煉獄姫 五幕 (電撃文庫)

ストーリー
ヴィオールの策略により、幻獣たちの襲来を受けた首都の街並み。
レキュリィやキリエすらも幻獣との戦いに巻き込まれる中、ユヴィオールは王城へと行軍する。
フォグとアルトが王宮にたどり着いたそのとき、『ローレンの雛』たちに隠された秘密が明かされる……。



始まっていきなりバトル、バトル、バトル。フォグとアルト、レキュリィとカルブルック、そしてキリエと、それぞれがユヴィオールの手先である幻獣たちとの戦いを繰り広げます。
ほんと、みんな格好良いんだなあ。とても勝てそうになかったり、一度ピンチになったりしても、機知や工夫で乗り切ってしまうから素晴らしい。
まず単純に惚れぼれしてしまうのがカルブルック翁ですね。正直ピンナップイラストだけでも十分なくらい魅力的なお爺ちゃん。
絶対に傷付けてはいけない主・レキュリィと王弟・リチャードを守りながら、群がる蛇鶏をばったばったとなぎ倒していくさまが最高でした。
レキュリィとの主従関係がまたぐっとくる。カルブルックが窮地に陥って焦るリチャードを尻目に、自らの執事を信じて悠然と構える姿が印象的です。信頼と忠義でつながった関係ってとてもいいよなあ。
キリエは、相変わらずの数撃ちゃ当たる戦法でケルベロスと対峙。
かつては完璧に主人公の敵として描かれていたキリエだけれど(もちろん今も敵であることに違いはないけれど)、いつの間にやら、彼女も主人公の一員という感じになってしまいました。
なんだかんだ言って好きなキャラなんですよねえ。余裕ぶってるわりに胸の中では意外と切羽詰まってるのが彼女の可愛らしいところだと思うんです。
そんなわけで、こんな風に彼女が侮られているのを見るとどうにも腹が立ってしまいます。
ただ「死んでも次がいる」だけの能力ではないのですよ! フォグとアルトさえ苦戦させるキリエの力を甘く見ないでいただきたいものですね。
フォグとアルトに関しては……あまり詳しく語る必要もないでしょうか。彼らはどこまでも、ふたりでやっていけばいい。
しかし前巻以降、アルトの成長ぶりには目覚ましいものがありますね。特に精神的な面ですけれど。
フォグに従ってただ戦うのではなく、フォグと共に立って戦う、戦友としての立ち位置を見つけられたのではないかと思います。強くなりましたね。


ヴィオールの『計画』が遂に明らかにされました。一気に全てがつながっていく感覚。これは凄い。『ローレンの雛』にまつわる謎や伏線には、思わず震えてしまいます。
どこまでも周到な計画を立て、限られた人数だけでそれを実行してみせたユヴィオールは大した人物なのでしょうが、まあもちろん、賞賛する気にはなれません。
この作品の悪役は気持ちいいくらいの悪役で、こんな奴らにいいようにされて、悲劇が引き起こされているのだと思うと、どうにも悔しくてたまらない。中でも一番小物臭かったユヴィオールにやられたというのがまた……。
終章の3人はほんのちょっとだけ格好良かったとか、全然思ってません。思ってたまるもんですか。
あとがきによれば次で最終巻の予定だそうです。さあ、反撃の時間だ。
すっかり勝った気になっている悪役たちに、フォグやアルトたちはどんな一撃を加えてくれるのでしょうか。キリエは、レキュリィは、どうなってしまうのでしょうか。楽しみでなりません。


衣装取り替えっこはいいけれど、ええと、アルトとキリエと……イオ? あと誰だ? 衣装って大切なんだな……。