まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

ゴールデンタイム4 裏腹なるdon't look back

ストーリー
とある深夜、束の間だけかつての記憶が戻り、リンダのもとへ駆けつけようとして見事にこけた多田万里。
翌朝、唇を腫らして発熱までしてしまった万里は、みんなの看病を受けることになる。
なぜかその流れから、香子と夏に海に行く話が持ち上がるが……。



200ページちょっとしかないのに相変わらずのボリューム感。
どっしりして、それでいて生々しく、どろどろした展開の連続に、何度も投げ出してしまいたくなって、でも続きが気になるから読んじゃう。悔しい。
普通にラブラブでハッピーな日常が描かれていても、不安な伏線がばりばりに張られていて、先で突き落とされることが分かっているから、素直にニヤニヤできません!
まあ、なんて言うんですか、イケイケ大学生も色々と大変なんですね。これがリア充の代償というやつか。


一時戻った過去の記憶。一緒に返ってきてしまったのは、失われたはずのリンダへの想い。
これまで、幽霊のような姿で、ずっと「多田万里」を眺めてきたあの人格。彼が胸にたぎらせる熱い気持ちは、記憶が再び消えてしまってもまだ万里の中に残るほどのものでした。
自分であって自分でない、過去の万里の気持ち。でも今の自分は、やっぱり香子を愛している。大切にしなければと思っている。
自分ではどうしようもできないふたつの気持ちに苛まれ、リンダと香子の間で万里は苦しみます。
私自身は記憶をなくしたことがないので、万里の苦しみは想像するしかできませんけれども……万里、やっぱりおばかさんだなあと、思わずにはいられません。
そのままでは何か致命的な結末が待ち構えているのだと、分かっているのに動けなかった。
怖さ。恐れ。そんなものを感じるのは当然ですが、それでも一歩踏み出さないといけなかったのに。
結局、起こってからでないと伝えられないんだから、まったく不器用なんだよなあ。まあ、今回は酒の力を借りなかっただけましですか。
彼氏が不器用なら彼女も不器用、ということで、香子も万里に負けず劣らず。
というか香子さん、重い! 愛が重いです! そして面倒くさいです! そりゃあ柳澤だって裸足で逃げだします!
こんな愛情を一身に引き受けてへらへら笑っていられる万里は、実は凄い器の持ち主なのではないかと錯覚させられてしまいます。
柳澤がしみじみと呟いたとおりですね。ほんと、このふたりが出会えて良かった。お互い、この相手でなければ途端に成り立たなくなることでしょう。
おばかさんと面倒くさい女のカップルとか、はた迷惑以外の何ものでもないけれど、でもお似合いなんだよなあ。恋愛って不思議だなあ。
香子はウルトラ面倒くさくて、それを差し引いてもまだ可愛いということは、別に否定しませんが。面倒くさい子ほど可愛い。


台風の荒波をくぐり抜けて、また凪を取り戻したように見えるふたり。
でもここはまだ台風の目。この先に今まで以上の嵐が待ち受けているように思えて、読んでいるこちらとしては気が気ではありません。
万里、香子、リンダ、そして過去の万里。彼らの思いは、これからどこへ向かって進んでいくのでしょうか。みんなが幸せになれる道が見つかるといいのだけれど。
今回はそれほど出番のなかった、柳澤や岡ちゃん(可愛い)の今後にも期待です。次巻も楽しみ。


万里はずるい。岡ちゃんにセクハラ台詞吐きたいです。あ、下の花的な(以下略)。