まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

“文学少女”見習いの、卒業。

“文学少女”見習いの、卒業。 (ファミ通文庫)

“文学少女”見習いの、卒業。 (ファミ通文庫)

  • ストーリー

心葉と瞳の密会を目撃してしまった菜乃。さらに心葉から、瞳とつきあうことにしたと聞かされる。
菜乃は2人を問い詰めるが何も教えてもらえず、焦りだけがつのっていくのだった。
そんなある日、瞳の過去を知る人物が現れ……?


心葉の後輩、日坂菜乃が主人公の外伝、最終巻。
このシリーズは1冊読み終わるたびに胸がぎゅっとなるよなあ。


前巻で驚愕の引きを見せてくれましたが、あの衝撃をやわらげるようなゆっくりとした出だし。
でもそんな中にもしっかりと伏線が(今読み返すと)張り巡らされていて、この作品らしいなあとしみじみ感じました。
「初戀」の頃と比べると、菜乃がいかにも文学少女らしくなっていて驚かされます。
この1年の間で菜乃も成長したんだなと思うと自分のことのように嬉しいですね。
言動はまだまだ子どもっぽくて無邪気ですが、それがまた彼女のいいところだと思います。
重い苦しみや苦悩を持った人々がほとんどの中で菜乃の明るさを見るとどこかほっとするんですよね。


瞳の過去に隠された話はとても重く辛いものでした。読み終わった今でもずんと心にのしかかっています。
しかし決して救いがないわけではなくて、悲しいけれどきらきら光っていて、登場人物たちの幸せな未来を願わずにはいられない、そんな物語だったと思います。
見習いシリーズでの心葉は本当にやり手ですね。今回も探偵役を見事にこなしてくれました。
そしてここでも菜乃の成長ぶりを実感。
迷い迷って右往左往して、瞳から突っぱねられながらも、その親友のために頑張って少しずつ真実に近づいていく菜乃の姿は胸を打ちます。
菜乃と瞳の確かな友情を感じました。友達っていいものですね。


そして心葉の卒業、迫り来る別れのとき。
駆け出しの文学少女の初恋は幕を閉じます。
最後の告白のシーンは本当に素晴らしかった。
菜乃からあふれ出る気持ちが、優しく強く伝わってきました。
それに応えた心葉の贈り物。これはずるい。こんなものもらったら嬉しいに決まってる。最後まで格好良いなあ、ちくしょう。
菜乃は遠子先輩とは全然違うし、本人はいまいち実感していないかもしれないけれど、遠子先輩とはまた違ったところで、心葉に何か大切なことを伝えることができていたんじゃないかな。
もちろん心葉だけではなくて、瞳やななせや、たくさんの人にも。
まだまだ見習いではありますが、きっといつか、とても素敵な“文学少女”になってくれることでしょう。


最後まで綺麗で切なくてじんとして、清々しい気持ちにさせてくれたシリーズでした。
この作品に出会えてよかった。ありがとうございました。


次は「挿話集4」とのことですが、巻末の広告ページに驚きの刊行予定が。楽しみです。