まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

イリヤの空、UFOの夏 その4

  • ストーリー

限られた予算の中で逃避行を続ける浅羽と伊里野。
ある日浅羽が思いついた宿泊場所は、有事休校となっている小学校だった。
ところが翌朝、その学校に新たな侵入者が現れ……。


シリーズ最終巻。
何もかも書きなぐってしまいたいような、何も書きたくないような。


「夏休みふたたび・前後編」と「最後の道」で逃避行の顛末が描かれています。
何もかも捨てて2人で逃げる。とても魅力的な響きですね。
ここにきてやっと幸せを掴むことができたと思ったのに、それを噛み締める暇もなく事態は急転直下。
浅羽があんなことをしている間に伊里野は……。
しかし中学生ということを考えると生々しくて、嫌になるほど現実味があります。
ここからの伊里野の崩壊が悲しい。
海での一言は胸に突き刺さりました。浅羽はどんな思いでこの言葉を聞いたのでしょうか。
僕たち読者にはそのごく一部をうかがい知ることしかできません。あまりに切なく、そして残酷でした。


最終話は「南の島」。
ようやく榎本から謎が明かされます。といっても大半は隠されたままのような気がします。
伊里野がいなくなって日常が戻り、もしかしたらハッピーエンドを期待できるかもしれないと思ったのですが……。
この物語の終わり方としてはとても美しいエンディングだったのかもしれません。
でもどうしても納得はしたくない。納得なんてできっこない。
伊里野は多分、幸せだったのでしょう。
そして浅羽は……?


エピローグで浅羽の夏は完全に終わります。
それは物語を締めくくるにふさわしい、部長・水前寺の一言でありました。


最後まで重く辛く悲しく切なく、それでも美しい。そんな物語でした。
心を打たれましたが、お勧めはしません。胸が苦しいから。