まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

『僕のカノジョ先生』感想

僕のカノジョ先生 (MF文庫J)
ストーリー

過去のトラウマで“先生”という人たちに不信感を持つ僕・彩木慎はある日の放課後、校内で一番人気の美人教師・藤城真香先生に呼び出された。「わたしは――君が好きです」……って、唐突に告白!?「君がわたしを好きと言うまで、どんな手を使っても迫り続けるわ」それからというもの、指導と称して放課後に呼び出され、なぜか一緒に大人な動画を観せられたり、過剰なスキンシップをされたり、デートに連れて行かれたりで、だんだん先生を意識するようになって……? でも、先生が教え子と結ばれるのはまずいよね? 絶対に両想いになってはいけない(!?)二人の禁断ラブコメ、授業開始!

24歳美人教師が一方的に好き好きと迫ってくる年の差イチャイチャ学園ラブコメ
んー、なんだか色々ともったいない感じ! 真香先生をはじめヒロイン陣はそれぞれ魅力的なのに、みんなエピソードが中途半端でキャラクターを活かしきれていない感。
他のヒロインなんて出さずに、先生とのイチャイチャに終始しちゃえばいいのにと思ってしまいました。でも個人的な推しは先生じゃなくて天無さんと美春(笑)。


とある理由から「先生」というものを嫌っている主人公の慎。そんな彼が、学園でも一番の美人教師・真香先生に突如告白されてしまう!
年の差ヒロインといっても、まあ高校生と24歳なら言うほどおかしくはないのか……? それにしたって先生の職業倫理どうなってんだよとか、恋愛経験皆無のくせに初っ端から飛ばしすぎだろとか、突っ込みどころは多々あるけれどもそういう細かい理屈は全部ぶん投げて、女教師に強引に恋愛指導されるシーンを書きたいんだという作者の気概は買う。
ただ、せっかく慎には先生嫌いという設定があるのに、ただ真香に流されるままに好きになっていっちゃったのは少々残念。せっかくならこの設定絡みでもう一波乱二波乱起きても良かったんじゃないかと思うけれど……。


真香以外にもヒロインが4人+1人ほど登場しますが、全員まとめて敵キャラみたいになってしまってなんだか不憫。
いや、彼女たちだって慎に告白してるわけだし、もう少しアフターケアというものがあってもいいのでは……。それなりに出番のあった天無や美春はともかく、カレン会長やくーちゃんに至ってはほぼ告白しただけの人という印象になってしまっていて可哀想である。
美春だって、実の兄のことを好きになった経緯とか、そういうのあるでしょ! ヒロインを出すのはいいのだけど、出すなら最後まで面倒を見てくれ。
上にも書いたように僕は天無と美春推しなので、まだ諦めてませんよ! ここからの美春の逆転満塁ホームラン、2巻からタイトルが『僕のカノジョ妹』に……っていう展開、あるでしょ! ないか! ないな!


イラストはおりょうさん。どのヒロインも大変に可愛らしく描かれていて素晴らしかったです!
まあ見てくれよこの表紙を……おっぱいじゃ! おっぱいなのじゃ!


他の人の裸を見たからって前の人の裸の記憶が消せるだろうか? 僕は消せないし消さないぞ!(胸を張って)

『公園で高校生達が遊ぶだけ』感想

公園で高校生達が遊ぶだけ (講談社ラノベ文庫)

ストーリー
瀬川エリカと俺、吾妻千里は小学校3年生からの幼馴染みだ。小学校でも中学でも、そして高校でも、瀬川と俺は、公園で遊ぶ。ダベったり、野球をしたり、走り回ったり、ちょっと喧嘩したり。「とりあえず吾妻の中で、わたしを可愛さピラミッドの頂点に設定するといいよ。そうすればわたしを通して“可愛い”がわかる」「瀬川を可愛さピラミッドの頂点に設定すると、具体的にどうなるんだ?」「わたしに似てれば似てるものほど、吾妻は可愛いと認識しだすよ」「じゃあ、電卓とかも可愛く見えんのかな」「ちょっと待って。吾妻の中でわたし、電卓なわけ?」そして今日も公園で、高校生の何気ない日常が紡ぎ出される――。

会話ギャグの魔術師
ゆきともさん(ゆきとも@永遠の17歳ラノベ読み (@yuki_tomo624) | Twitter)が発売前からガン推ししていたので読んでみたらめっちゃ面白かったー! ありがとう!
名は体を表す。お話の内容は本当に「公園で高校生達が遊ぶだけ」なのだけど、その辺にいそうな、でも個性豊かな登場人物たちが、何気なく駄弁っているだけでやたら楽しいのだ!
中身もなにもあったもんじゃないんだけれどもやたら満足感があるんだなあ。いいもん読みました。


主人公の高校生・吾妻。その幼馴染にしてヒロインの瀬川。それから吾妻の悪友のガンちゃんや前島や、瀬川の親友の茶茂や岡本や、ああそれと忘れちゃいけない吾妻のドSな妹・美咲。
そういった面々がわちゃわちゃと公園に集まって、ベンチでどうでもいい話をしたり遊具の上でどうでもいい話をしたり、雨宿りをしながらどうでもいい話をしたりする。
ほぼ全ての出来事が公園の中で完結しているのに、それぞれのキャラクターや日常のことが少しずつ垣間見えていくのが面白い。傍から見ればどうでもいい話でも、現役青春まっさかりな彼ら彼女らにとっては意外と大事な話だったりするんだろうな。
そして単純に会話が楽しいんだ! テンション高いツッコミでドカンと爆笑を取るタイプの笑いじゃなくて、掛け合いの可笑しみでずっとクスクスさせるタイプの笑いで、それが1冊ずっと続くもんだからもう最高。短い章立ての各章それぞれが、まるでひとつのコントのようである。
やたらストイックな伏線回収にもこだわりを感じました。「昔なぜか筆箱の中の消しゴムが増えた事件があった」みたいなどうでもいい雑談エピソードの真相が、後の章での別の人物との会話の中で明かされたりする。どんなにささいなことでも疑問を残さないという気概が見えるぜ……。


吾妻と瀬川。家もお隣さんで、小さな頃からずっと一緒で、別に恋愛対象というわけでもないんだけれども常に相手のことを気にしていて、会えば冗談と軽口を飛ばしあう気のおけない間柄。いやあ、いいなあ幼馴染。久しぶりに心からいいなあと思う幼馴染を見た気がする。
他の誰かから付き合えばいいのにと言われたりすると全力で否定する(吾妻も瀬川も)のに、相手に異性の影が見えたりすると途端に不機嫌になっちゃったりする(吾妻も瀬川も)。友人以上恋人未満な関係ってたぶんこういうことを言うんだ。きゅんきゅんしちゃう! しかもなに、お前ら交換日記とかやってんの。半端ねえな。これはガンちゃんも激おこですよ。殴る。ガンちゃんが殴らなくても僕が泣きながら殴ってやる。もーそんな青春送ってみたかったー!!!
とにかく最初から最後まで楽しくて仕方のない作品だったのでぜひシリーズ化してほしいです。続いてくれー!


イラストはトコビさん。雰囲気抜群の表紙イラストが素敵です。
瀬川も美咲も、どことは言いませんが、特定の部位の迫力が凄いですね。どことは言いませんが。おっぱい。


恋愛脳茶茂さんの幼馴染ーズいじりが好きすぎる。

『彼女のL ~嘘つきたちの攻防戦~』感想

彼女のL ~嘘つきたちの攻防戦~ (ファミ通文庫)

ストーリー
遠藤正樹は嘘がわかる特異体質で、川端小百合は決して嘘をつかない少女だった。そして学校のアイドル佐倉成美は、常に嘘をふりまく少女だった。ある日、川端と佐倉の共通の友人が亡くなってしまう。自殺という噂だったが川端は「彼女は殺された」と言い、佐倉も「彼女を追い詰めたのは私」とうそぶく。真相を知りたいと川端に頼まれた正樹は、その力で誰も知らない佐倉の心の内を知ってしまい――。願いと嘘と恋が交錯するトライアングルストーリー。

嘘つき少女の本性は
嘘を見破ることのできる主人公、周囲に嘘ばかりついている少女、決して嘘をつかない少女。3人の少年少女の交わりを通して、とある少女の死の真相を探りだしていくミステリアス学園青春ストーリー。
「嘘」や「自殺」というワードから殺伐としたものを感じつつ読みはじめたのですが、その実とても温かくて、それでいて少し鼻につんとくる、心優しい物語でした。切なさも悲しみもあるけれども全部ひっくるめて優しさに持っていく、三田千恵マジックだなあ。
周囲のみんなに嘘をつきつづけるヒロイン・佐倉が特に魅力的で良かったです。


主人公の遠藤は他人の嘘が分かるという不思議な力の持ち主。だからこそ嘘をつく人間が苦手で、学校のアイドルの佐倉のことは嫌っているし、いつも正直な川端のことを気にかけている少年です。
人の嘘がわかるなんて、数ある超能力の内でもトップクラスに欲しくない能力じゃないですか? それがプラスになる瞬間が思い浮かばない……。
遠藤の佐倉に対する評価なんかを見ると、いくらなんでも嘘に対して過敏すぎるとも思えるけれども、こんな力があったらそれも仕方ないかなあ。特に彼の場合は、父子家庭なのにその父ともこの力のせいでギクシャクしてしまっているくらいだし、逆に、一切嘘をつかない川端のことを特別視してしまうのもわかる。個人的には、上手に嘘をつく小悪魔的な女の子って素敵に見えますが……。


川端の唯一無二の親友にして、自殺してしまった女の子・小林。川端は、その小林の死に佐倉が関わっているという……。
川端の力になるべく、佐倉の嘘を暴くために苦手な彼女に接近する遠藤だけれど、一緒の時間を過ごせば過ごすほど、佐倉が実はいい奴だということがわかってしまう。初めこそ「嫌い」だとか言い合っていたのに、いつの間にやら普通の友人以上に仲良くなっていたふたりの姿がラブコメ的にアツい。いや、もちろん川端のまっすぐな愛情表現も素晴らしいのだけど、ごめん、誰からも愛される学園のアイドルが自分だけには本当の姿を見せてくれるっていうシチュエーションに弱いんや。
そんな佐倉が語る小林の姿と、川端が語る小林の姿のギャップ。どちらも真実のようでいて、まだ隠された部分がある。嘘ばかりついていた女の子が本音を語り、嘘を嫌っていた少年が嘘を受け入れてたどり着いた答え。優しい嘘を通して知る、小林が残した大切な友人への思いに胸がいっぱいになりました。これが三田千恵ワールド。嘘に満ちた優しい世界です。
それにしても、この終わり方は卑怯だ! やはり佐倉成美は魔性の女である。たぶん続かないんだろうけど、続きが読みたいなあー!!


イラストはしぐれういさん。凄まじい表紙力。この瞳の中で溺れたい。
佐倉も川端も表情豊かで、本当に甲乙つけがたい魅力を放っておりました。


優しい世界の中で1人だけ株を下げた女こと前田さん……(不憫)。