まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

『緋弾のアリアXXVIII 絶島の珊瑚礁』感想

ストーリー
武装探偵、通省『武偵』。それは凶悪化する犯罪に対抗するため武装を許可された探偵の事である。その最高レベルのSランク武偵・アリアのパートナーに選ばれてしまった(普段は)ただの一般人・遠山キンジ。キンジは武装革命組織『N』の提督・超々能力者ネモによる瞬間移動を妨害した結果、南洋の無人島に漂着してしまう。食糧も道具もほとんど無い環境下、キンジは同じく島から出られなくなったネモと競うようにサバイバル生活を始める。初めは敵同士いがみ合っていたキンジとネモだが、二人きりで生き延びる内に少しずつ距離が縮まっていき……?

キンジとネモの無人島0円生活、はっじまっるよー!
ということで今回の舞台は絶海の孤島! ヒロインは前回まであれだけ戦りあったNの提督ネモ!
無人島でナイフ片手に生き延びていくキンジさんのサバイバルぶりは見ていて実にワクワクするし、ネモも思わぬ可愛さを見せてくれるしで、いややっぱり面白いんだわ、このシリーズ。


ヒステリアモードにならなければ無能とか言いつつも実は異常なハイスペックとして知られつつある我らがキンジさん、宿敵と2人で無人島に流れ着くという窮地に際しても「キンジさんならイケる」と謎の安心感がある。
明日を生き延びられるかというギリギリの状況から、水と火の確保に始まり、栄養源探しに家の制作に脱出方法の模索等々、次々に生活の幅を広げていくのがもう楽しくてたまらない。これが現代版ロビンソン・クルーソーか。
素晴らしいのは、サバイバルの技術や理論にちゃんと説得力がある点です。「ズボンのポケットの底にある綿みたいな糸クズ」を火種として使ったのには唸らされたし、聞いたこともないような動植物や自然に関する知識もわんさか出てくるし、いつも思うけれど赤松先生はこういう細やかなところでの取材力が本当にすごい。
リアリティに満ちているとまでは言わないし、たぶん専門家が見たら首をかしげる部分もあるんでしょうが、ごく一般的な読者としてはふんふんと納得させられっぱなしでした。うまい小説はうまく読者を騙すというけれど、なかなかどうして、並ではありません。


世界各地にキンジガールを作っては去る罪な男キンジさん、今回は敵の提督を毒牙にかける。
いやあ、毎度のことながらね。「またアリアじゃないのかよー」と思いつつも結局「アッ……この子かわいい……」ってなっちゃうんですよね。チョロいオタクと言ってくれ。
それにしたってネモは特に魅力的なヒロインでしたよ! 当然最初は敵として接するわけだけれど、無人島に2人きりとなったら自然に一緒にいる時間もできてくるし、お互いがお互いを助けるような場面だって出てくる。そんな中で段々と心の距離が縮まっていく。
かつての敵と一時休戦して共に生きながら愛を育むロマン。いいですわあ。好きですわあ。
ネモがまた健気で可愛いんだなあ! 一瞬「このまま無人島で二人暮らしエンドでもいいのでは?」とか思っちゃったもんね。アブねーアブねー。僕はアリア一筋なんですよ!
そんなアリアも最後にちょびっと出てきてくれてニッコリ。そろそろアリア回、来てくれてもいいんですよ(次回は白雪回っぽいけど)。


なぜクサビライシは一見で分かるのに女の子のパンツはハンカチと見間違えてしまうのか、それが安心と信頼のキンジさんクオリティー。

『恋してるひまがあるならガチャ回せ!』感想

ストーリー
夢も将来も彼女もない留年寸前大学生の俺は、バイト代をすべてスマホゲーに突っ込んでガチャだけが生き甲斐の生活を送っていた。そんな俺が大学で知り合ったのが旧華族出身のガチお嬢様・薗村紗雪。やつには秘密があった。あらゆるスマホゲーで俺のライバルとして立ちふさがる、俺以上の廃課金ゲーマーだったのである! 生まれつき恵まれまくったお嬢様なんかが俺の廃課金道に踏み込んでくるなんてゆるせねえ、絶対に負けられねえ! スマホゲーだけが俺の青春、ガチャだけが俺の人生の煌めき――。業界震撼、世界初の廃課金ラブコメがここに爆誕!

6月9日(ロックの日)に『さよならピアノソナタ』(さよならピアノソナタ (電撃文庫))を読み返していたら頭抱えるくらい面白くてモーレツに新しい杉井作品が読みたくなって積んでた今作に手を伸ばしました。さよピはいいぞ。今をときめく赤坂アカ先生が作画をしている漫画版(さよならピアノソナタ 1 (電撃コミックス))もいいぞ。もし未読の方がいたら騙されたと思って読んでみてください。


話を戻して今作。スマホゲーとガチャに人生の全てを費やす限界大学生の主人公が、同じく廃課金勢のお嬢様ヒロインと出会い、バチバチ張り合いつつも親交を深めていくソシャゲラブコメ
はー面白かった! やっぱり僕は杉井先生の文章が大好きなんですよ。シリアスもいいけど、ギャグがまたいい。何気ない会話でも声出して笑っちゃう。ほんとコメディセンスばっかりはね、読者の趣味にもよると思うんで一概には言えませんが、抜群ですよ。


「惨獄死クロニクル」「獣仙娘々」「焼き肉ストライカーズ」等々、次々に出てくるオリジナルスマホゲーの数々。そしてその全てにことごとく課金を振りまいていく主人公の遠野。こいつは中々やべーぜ。スマホゲーのイベントを走りつつ体だけは授業に出席、ガチャ40連を外しては奇声を上げ(大学構内で)、スマホゲー対戦で敗れては奇声を上げ(大学の食堂で)、そしてまたiTunesカードを手にガチャを回し、金がなくなり1週間以上バイトのために自主休講。底辺大学生じゃねえか!
その熱中ぶりだけあってスマホゲーには一家言ある遠野さん。口を開けば聞かれてもいないスマホゲーの薀蓄が湯水のように流れ出す。これはもはや哲学だ。会話はできてないけど。ク○オタクじゃねえか!
まあここまでのめりこめるものがあるってのはいいことだな。いいことかな? あんまりいいことじゃない気もしてきたな?
樋沢とかいう奇跡みたいな友人がいてほんとに良かったなお前……。まあこいつはこいつで○ソナンパリア充野郎だけど……。


そんな詰んでる遠野と運命的な出会いを果たしたヒロインは、お嬢様なのに同じく詰んでる廃課金勢ぼっち大学生の紗雪。
こんな美人でしかも趣味も一緒で、すぐに意気投合できるかと思いきや彼女からのフレンド申請をさくっと断っちゃうスマホゲーガチ勢の遠野さんマジ遠野さん。何やっちゃってんの……。まあ、それだけゲームに本気だからね。本気なら仕方ないですけどね。でも意地はってかっこつけたわりにはすぐに後悔してウジウジしちゃうあたりがほんと、駄目なオタクって感じだ……。
そんな具合に残念なすれ違いを演じつつもなんだかんだで仲良くなっていくふたりのラブ未満コメ増量の日常が楽しかったです。ずっとライバルだったふたりの満を持しての協力プレイとか、お話としてはベタだけれどやっぱり燃えるよね。
恋愛方面に関していうと、わりと紗雪からのアプローチが多くて押せ押せに見えるのが面白い。ラストで思わぬ展開が待っていたので、次巻以降での関係の変化に期待です。ってもう次の巻出てるやんけ! 読まなきゃ!


イラストは橘由宇さん。もふもふと戯れる紗雪お嬢様かわいい。
あとわりと出番あるのにイラスト化されてない樋沢がすごい不憫なので描いてあげてほしい(笑)。


上記のきっかけで読み始めた作品のあとがきの書き出しがこれ、すごいエモみを感じた。

『察知されない最強職 1』感想

察知されない最強職(ルール・ブレイカー) 1 (ヒーロー文庫)

察知されない最強職(ルール・ブレイカー) 1 (ヒーロー文庫)

ストーリー
交通事故で命を落としたヒカルは、死後の世界で魂の裁きを受ける列の中にいた。死者たちは放心状態で行列に並んでいたが、意識を取り戻したヒカルは行列を外れて辺りを探索する。そこで死者が死者をいたぶるいじめの現場に遭遇した。腹が立ったヒカルは、いじめられていた青年に合図し、反撃の一手を与えることに成功する。青年と別れたヒカルは、その機転と行動力を認められ、「貴族」ふうの少年に声をかけられる。その少年、ローランドが言うには、「ある頼み事」を聞いてくれれば異世界にあるローランドの肉体に転生させてくれるというのだが――。

異世界で暗殺された元貴族の少年。その身体に魂ごと転生した主人公・ヒカルが、転生時に得たスキル「隠密」を駆使して異世界を駆けるファンタジー
転生の時にもらったギフトと転生者の特権(?)を活かした陰ながらの無双ぶり。囚われの少女を救い出すストレートな話の展開。楽しく読ませてもらいました。


もし異世界に転生できるとして、その時に何かスキルを上げることができるとしたら。隠密スキルはわりとロマン溢れる選択肢ですよね! まあ結局体力とかスタミナとか、そういうのを上げちゃう気がしますけど……だってモンスターとか普通に怖いし……。
しかしヒカルくんにはそもそもそんな悠長なことを言っている余裕がなかった! なんてったって1時間以内に伯爵を暗殺しなければならないから!
いやいや15歳の少年に転生先でいきなり暗殺クエスト発生させるとか鬼か。こちとらその世界で今後も生きていかなきゃならんっちゅーねん。もちろん、そこでやってのけてしまうから主人公なんですけど。
ヒカルは15歳にしては冷静さや決断力が際立って大人びていて、悪く言えば可愛げがなくて、なんというかリアルではあんまり友達になりたくない感じのいけすかない奴ですね(笑)。まあいきなり異世界に放り込まれるんだから、これくらい特別でなければね。


やむなく手にした隠密&暗殺スキルだけれど、ファンタジー世界で銭を稼ぐのに案外役立っていて笑います。技能があるってだけでずいぶん違うもんだ。
それで毎日クエストをこなす内にギルドの受付嬢と良い仲になっちゃったりしてね。ベタ展開だけどそれはそうとフレアちゃん可愛いなちくしょう。
またヒカルへの軽い愚痴になっちゃうんですけど、お前どうしてこれでフレアちゃんにぞっこんにならないわけ! 15歳でしょ青少年でしょ! 気軽に恋に落ちちゃえよ! もっとおっぱい見るとかさあ!
ポーラだってそうですよ。お前あんだけキメッキメで「運命の人」感出しといてゴブリンから助けてはい終わり、じゃないんですよ。女の子を恋に落としたんだからそれ相応のアフターケアをするべきなんですよ。分かんないかなあ~少年???
……とかなんとか思っていたら、最後にちゃんと本命ヒロインが待っていてくれたので安心しました。逆に、どうしてこうも可愛い女の子と連続で懇意になれるんだか……という意見もありますが、まあラヴィアちゃんに関しては文句なしでしょう。人生において悪い貴族からいたいけな女の子を救い出すことほど重要なイベントはそうそうないからね。


さて今後の展開ですけど。ヒカルの無双モードがいつまで続くのかが目下の問題でしょうか。隠密特化ってかなりピーキーですしね。新たに得るスキルがどんなものかも楽しみですが、ソウルボードのことなど周囲からしたら結構なズルもやってのけているので、どこかでその揺り戻しが来るんじゃないかとちょっと心配です。
「なろう」ではだいぶ先まで更新されているようですが、僕は画面で小説読めない病なんで(笑)おとなしく書籍化を待つことにします。楽しみです。


イラストは八城惺架さん。あかんフランちゃんが可愛い。フランちゃん可愛くない?
ラヴィアもポーラもいいけどキャラデザでは断然フランちゃんだわ……一緒にジュース飲みたい……。


そういえば地味に初ヒーロー文庫でした。