まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

宇宙人の村へようこそ 四之村農業高校探偵部は見た!

ストーリー
母の都合で山奥にある四之村へと引っ越してきた高校生・神室圭治。
母の実家が村を統括する「八家」だったことから、転校先の高校で周囲から恐れられ、距離を置かれてしまう。
そんな中、風変わりな少女・ハコから声をかけられ、圭治はかつて母も所属していたという探偵部へ入部することに……。



東京から引っ越してきた少年が、世間から隔絶され異様な発展を遂げた村「四之村」での奇天烈な怪事件に巻き込まれていくミステリアスSFストーリー。
いやー、面白かったです。進みすぎた科学技術や進化しすぎた人類が元凶の不可思議な事件の数々は、どれも予想外の結末で見応えがありました。
見た目は普通の村なのに明らかに異境という気味の悪さが、次に何が起こるか分からないハラハラ感を演出してくれていますね。


岐阜と石川の間に潜む隠れ里、四之村。曰く宇宙人の末裔が暮らすというそこは、外界より数世代進んだ科学技術とオカルト染みた伝統の村。
村の長たる役割の「八家」制度、そこに連なる人々の人間離れした能力、国家権力さえ力の及ばない自治。
東京からやってきた圭治を出迎えたのは、そんな奇妙な“常識”でした。
日常的に殺人事件が起こって誰もそれを驚かなかったり、学校内での事件の捜査が生徒に任せられていたり、村も高校も住民たちも普通に見えてやっぱりおかしい。どこかズレている。
探偵部として事件を追っていくにつれてそのズレがどんどん大きくなっていって、どんどん村の気持ち悪さが露呈していくこのゾクゾク感がたまりません。


収録されたお話は全五話。何を書いてもネタバレになりそうで迂闊なことが書けないのですが……一番好きなのは第四話の「ハートマークと平等人間」ですね。一番短いお話でもあるんですけど、ほの甘い恋愛要素と後味の切なさが素晴らしかったです。
ヒロイン役は一応ハコさんということになるんでしょうか。圭治を探偵部に引っ張りこんだ先輩で、自由奔放かつ肉食系(文字通り)な言動がダイナミックな女の子ですね。
探偵部と名は付いているし、一応事件を解決に導いたりはしているんですが、それにしても全く推理ができてない(笑)。
行き当たりばったりかつ体当たりなふたりの捜査は危険だらけで、ざっくり各話1回ずつ以上は死にかけてる気がします。ほんとどんだけ危ない村なんだって話ですが、危なっかしすぎて目が離せません。次はどんな事件に巻き込まれてしまうのか、今から次巻の彼らが心配……いえ、楽しみです。


イラストは霜月えいとさん。綺麗な絵柄なのにどこか不安を煽る、見事なイラストでした。
次はぜひ昌子のイラストが見たいです!


ダイコン祭りが気になって仕方ないわけだが。