王手桂香取り！2

王手桂香取り! (2) (電撃文庫)

ストーリー
中学校将棋団体戦の東日本代表の座を勝ち取ったあゆむの前に、最も偉大な駒、王の駒娘が現れる。
来るべき決勝大会に向け、女王のスパルタ指導でさらに棋力をあげていくあゆむ。
一方では桂香と息抜きのお出かけをして、少しずつ距離を縮めていく……。


長年（個人的に）待ち望んでいた、正統派将棋ライトノベルの第2弾。
うおおおお盛り上がったなあ！　競技は将棋なんだけれどやっていることはスポ根そのもので、努力を重ねて強敵と雌雄を決するという、まっしぐらな展開がとても熱かったです。
将棋に没頭するだけじゃなくて、桂香先輩としっかりデートなんかも決めちゃってるあゆむくんが、密かにやり手すぎて恐い。


香車、桂馬、歩の教えの下で急成長したあゆむの前に現れた、世界最強の将棋指しこと女王様。金銀飛車角が登場しなかったのはちょっと残念でしたが、まあ、キャラが多くなりすぎてもしょうがないということですか。
将棋の全てを知っているという女王様とあゆむの将棋問答は、なかなかに面白かったですね。現実の将棋の研究でもまだ分かっていないことをどう説明するのか疑問だったのですが、上手いというか、ずるいというか、なんとも小賢しい回答を用意していて、笑ってしまいました。
女王様は厳しいところもあるけれども、意外とあゆむのやりたいようにさせてくれるところもあって、いいキャラクターでした。指導者としても優秀なように見えますね。もちろん、毎日長時間に及ぶ指導を、しっかり吸収できるあゆむの才能と努力あってのものですけれども。
あゆむは何を置いても素直ですから、人一倍、教えを受ける才能に恵まれているのかもしれません。


終盤の対局の場面は、ほんとうに手に汗握りました。バトルでもアクションでもないのに、指し手ひとつひとつになぜかスピードを感じるからすごい。
こちらが用意している手があるのに、その予定を覆す手を相手が差してくる。それを見て、その手の意味を考えて、対応を探っていく。
刻々と迫る時間に追われて頭の中はぐるぐる回り、ぐんぐんと高まる緊張。この臨場感は素晴らしかったです。
詳しい棋譜や駒の配置が書かれていなくても、将棋の対局を熱く描くことはできるのだなと、深く感心させられました。


大舞台での勝負を終えたあゆむ。すっかり力を付けた彼の前に今あるのは、アマチュアとしての道と、プロを目指す道です。
あゆむがどちらを選ぶのかは分かりませんが、どちらにせよ、また熱い対局を見せてくれるだろうということは確か。期待しておくとしましょう。
もちろん、桂香先輩との仲がどうなっていくのかも気になります！　もう半分カップルじゃないのってところまで来ているような気もしますが、まだ自覚的には「先輩と後輩」の間柄でしょうから、ここからの距離をどう縮めていくのか、楽しみですね。
もしかしたら、桂香先輩の方がお姉さん力を発揮して誘ってくれたりするかも！　ワクワクです。


イラストはヤスさん。ケーキを食べる桂香先輩のイラストが超可愛い。
桂馬のキャラデザが結構好きなので、また出てくれるといいなあ。


将棋を全く知らない人が読んだらどう思うのか、感想を聞いてみたい。