まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

聖王剣と喪われた龍姫Ⅰ

ストーリー
体内の霊力を使用した兵装<魔銃>を駆使し、繁栄を続けるヴァローナ帝国。
英雄と讃えられた父を持ち、将来を嘱望されたロジオンは、ある日を境に記憶を失う。
それから二年、無気力に日々を過ごすロジオンの前に、<宝剣>を抱えた龍血族の少女、リーザが現れ……。



伝説の剣を用いて、帝国の理不尽から少女を守るバトルファンタジー。
2年前の事故で記憶をなくした少年と声をなくした少女、ふたりの再会から全てが始まる、という展開がロマンチックでした。
嫌な感じの伏線がいくつか張られているようで、今後どうなるのか結構不安なところ。


ヒロインのリーザが儚くて魅力的ですね。声が出せないというのもそうですが、小さな体で無謀な願いを叶えようとたったひとりで奔走する姿は悲壮感たっぷりで、思わず手を差し伸べたくなる女の子だと思います。
主人公のロジオンとだけは指輪の力で会話ができるわけですけれども、特別な関係って感じでいいですよね。こういうのに弱いんです。
彼女の種族・龍血族も、帝国民から疎まれ、避けられ、虐げられてきた人々で、差別的な扱いを当たり前のように受けているのに、誰もそのことを気にしていないというひどい状況に胸が痛くなります。
ロジオンは元々帝国の支配体制に疑問を持っており、だからこそリーザを助けようと思ったわけですが、注目すべきは彼の幼馴染・グリューネ。
基本的に優しくてまともな性格の持ち主なのに、自らの立場や、龍血族への忌避感から、明らかに最低の人間っぽいドミートリィに協力しようとする彼女の姿に、やるせなさを覚えました。


自分の決意の甘さを知り、一度は折れかけたロジオン。何もかも終わったかに思えたけれど、そんな彼にも数少ない大切な友人がいました。
ふたりの友人の助けと、また何より強い決意を持って、窮地を脱したロジオンとリーザ。
しかしリーザの願いを成就するには、まだまだ遠い。何やら不穏なやりとりがいくつもありましたし、あとがきにはあんな風に書かれていましたが、私はハッピーエンドを信じて、続きを期待しています。
ひとつ気になるのはグリューネのことですね。彼女とロジオンの間にもリーザに負けないくらいのドラマがありますが、さて。


イラストは萩原凛さん。ドミートリィの嫌味な顔つきがいいですね。
あとテレーザ。キャラデザも、キャラクター自体も、結構好きなのですが。


「硬質化した鱗をやすりで削り落とす職人」にはどうやったらなれますか。なれませんか。そうですか。