まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

超粒子実験都市のフラウ Code-1#百万の結晶少女

ストーリー
奇跡の素粒子【グロア】が満たされた実験都市で、異能を持つ子供が生まれ始めて十数年。
高校生の隼人は、ある日、空から降ってきた少女・フラウを受け止める。
謎の集団に追われているらしき彼女を思わず庇ってしまった隼人は、エア・スクーターで街中を逃げ回るはめになり……。



土屋先生の新作ということで手に取りました。近未来都市でのロボット少女とのボーイミーツガール。
帯に「巨大都市を駆け抜ける、ノンストップ異能アクション!!」とありますが、いやはやまさしく。
短章でぽんぽんと区切られた文章は息をつかせぬスピード感に溢れていて、引っ張られるままに読んでしまいました。文章に勢いがあると、バトルにも迫力が感じられていいですよね。


主人公を取り巻くキャラクターが魅力的でした。
まずはやっぱりヒロインのロボット少女フラウ。純真無垢を地で行くきらきらした女の子。ちょっと天然。
人間のことをもっと知りたいという彼女を助けるために隼人たちが奮闘することになるわけですが、こんな女の子が目の前で困っていたら、そりゃあ助けたくなるのが人情というものでしょう。
初めて外の世界に出て、見るもの全てに瞳を輝かせる好奇心いっぱいな彼女を見ていると、こちらまでわくわくした気分になってくるから不思議ですね。
それから、隼人の幼なじみにしてトップランクの能力者かなめ、大人気双子アイドルにして研究者の千春と千夏。
改めて隼人の周りが妙な権力者だらけで笑ってしまいますが、フラウを守ったり救ったりする中で、こういった特権持ちのキャラたちが大活躍を見せてくれました。
特にチハチナはお気に入りのふたりです。アイドルなのにフリーダムな生き方が素敵だと思います。もう彼女たちがいれば大抵のことはどうにかなってしまいそう。
いくら迷い込んだとはいえ、隼人のような一般人が出会うにはあまりに偶然がすぎる相手ですし、何か秘密があるのかもしれません。こういったミステリアスな部分に、また惹かれてしまうわけですが。


ヒロインがロボットとなれば、人間とロボットとの差がテーマになってくるのは必然とも言えましょう。
フラウにだって心があることは明らかだし、隼人たちもロボットだからといって接し方を変えるようなことはないと思います。
ただ京子の言い分に一理あることも確かです。このように思えるのは私たちが人間だからで、ロボットの側からしたらどうしても引け目を感じてしまうものなのかもしれません。フラウの「恥ずかしい」にそんなことを感じて、切なくなりました。
ひとまず今回は一段落しましたけれども、この絶対的な差は、今後も隼人とフラウの物語に大きく関わってくるような予感がします。
フラウのこと、隼人のこと、チハチナのことなど、謎がたくさん出てきました。これらの謎が次の展開にどうつながってくるのか、とても楽しみです。


イラストは植田亮さん。元々好きなイラストレーターさんですが、今回のイラストも素晴らしかったです。
フラウの柔らかな表情にうっとりしてしまいますね。しかしこれはもはや、スリットという概念を超えた何かではなかろうか。


ちょっとチーズ蒸しパン買ってくる。