まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

魔法少女育成計画

魔法少女育成計画 (このライトノベルがすごい! 文庫)

魔法少女育成計画 (このライトノベルがすごい! 文庫)

ストーリー
数万人に一人の割合で本物の魔法少女を作り出すソーシャルゲーム魔法少女育成計画』。
幸運にも魔法の力を得た少女たちは、その力で困っている人々を助け、充実した日々を送っていた。
しかしある日、運営から「増えすぎた魔法少女を半分に減らす」という一方的な通告が届いて……。



本当の魔法少女になれてしまう夢のようなソーシャルゲーム
「変わりたい」という願いを持った女の子たちが、魔法の力を手に入れて、困っている人たちに救いの手を差し伸べる素敵な素敵なマジカルストーリー……では、もちろんありませんでした。
魔法少女が増えすぎてしまったという言い訳の元に始まってしまう、少女たちのサバイバルバトル。
一週間にひとり、負けた少女が命を落とす。(見た目は)愛らしい女の子たちによる、裏切りとだまし討ちと復讐の連鎖は、とても気分のよいものではありません。
正義も悪も、好感が持てるかどうかもまるで関係なく、あっさりと物語から退場していってしまうキャラクターたち。一章読むごとに落ち込みました。えぐい。


登場する魔法少女は16人。ピンナップのキャラ紹介のページを見たときはずいぶん多いなあと思いましたが、魔法少女としての特性や性格など、みんな個性的であったからか、読みすすめるうちに気にならなくなりました。
逆に、キャラが多いことで、協力体制・敵対といった色々な要素が生まれていて、単なるサバイバルではない奥深さが生まれていますね。
特に、それぞれの魔法少女がひとつだけ持っている得意な“魔法”の使い方が面白かったです。
じゃんけんの強弱のようなものですね。誰かの魔法と戦うには具合が悪いけれど、違う誰かに対してはとても有用だといったような、魔法同士の相性が、戦いに意外性をもたらしていました。
腕力が強い者と弱い者がいて、必ずしも強い者が勝つとは限らない。そもそも目的は生き残ることなのですから、単純に逃げ足が速いだけでも、最終的にキャンディーを集めてさえいれば勝ててしまうんですね。
肉弾戦だけではなくて、心理や思考の裏を突くような戦い方もあり、それがバラエティに富んだ勝ち負けへとつながっていて、楽しく読めます。
いえ、冷静になって考えてみると、楽しくはないですね。勝ち負けなんていっても、結局は殺し合いなんですからね。
ああ、途中で追加されるアイテムもそうですね。きっちり伏線を回収していることといい、細かいところまで計算しつくされているなあと思いました。


魔法少女たちについては、はて、何をどこまで書いたらいいのやら。すぐに書いてはいけないところまで書いてしまいそうで怖い。
ええと、とりあえず、スノーホワイトラ・ピュセルリップルとトップスピードの交流には心が温まりましたね。
それから何より、ハードゴア・アリスが果たした役割は大きかったなあと思います。彼女の正体については、登場したときからなんとなく予想がついていましたけれども、それが明かされた場面ではやっぱり、じんわり来るものがありました。
彼女がいたことで、この救いのない物語でも少しだけ光が垣間見えたような、そんな気がします。


ハッピーエンドでもなんでもないし、後味も決して良くはないけれど、読みごたえのある物語でした。
さすがにこのまま続編というわけにはいかないでしょうが、また別の魔法少女たちのお話にしろ、外伝にしろ、ぜひ読んでみたいものですね。
次巻でも次回作でも、喜んで手に取りたいと思います。楽しみ。


イラストはマルイノさん。可愛いながらも不気味なキャラデザインが実に秀逸でした。
ビジュアルではルーラが特に好きですね!


16人で人気投票やってみたい。本命はねむりんでひとつ。