まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

しずまれ! 俺の左腕

しずまれ! 俺の左腕 (このライトノベルがすごい! 文庫)

しずまれ! 俺の左腕 (このライトノベルがすごい! 文庫)

ストーリー
たくさんの友人に囲まれ、充実したリアル生活を送る高校2年生・篠中紳士。
ある日、高速で飛んできた謎の物体に衝突した紳士は、中に封印されていた異世界の魔王に憑依されてしまう。
周囲に迷惑をかけないように、友人たちから距離を置こうとする紳士だったが……。



左腕を悪の魔王に支配された少年が、魔王から世界を救うべくたったひとりで奮闘するコメディ……で、いいんですかね、これ?
いやはや、前作のときも思ったけれど、また色々と判断に困る作品を持ってきてくれる。いや、そこが魅力だともいえるのですが!
つっこみどころだらけだし、話のネタを詰め込みすぎてだいぶ混沌としていますが、それ込みで楽しく読めたと思います。
ところどころのギャグの応酬が秀逸でしたね。大いに笑わせてもらいました。


全体的にキャラクターのノリとテンションがおかしなことになってます。
主人公・紳士くん。その人柄からか、幼なじみふたりをはじめ友人を多く持ち、みんなから愛されていた彼ですが、魔王に憑依されてからはガラリと一転、邪気眼キャラに。
いやあ、いくら左腕が疼くのが事実だとはいえ、この振る舞いに、この台詞のセンスですよ。元からこっちの素養があったとしか思えませんね。
他人を遠ざけるためにわざとやってるのなら大したものですが、様子から察するにどうやら大真面目のようで。少しは他人の目というものを考えてみたらいかがなものでしょうか。
まあ、自分がどう思われようとも大切な人たちを守ろうという気概は、ちょっと格好良いかもしれない。
すっかり周りから距離を置かれる存在になってしまった紳士ですが、喜多郎と真衣の幼なじみコンビはそんなときでも紳士の側に寄り添い続けていて、つくづくいい友だちを持っているなあとほっこりしました。
紳士本人から拒絶されても諦めないあたり、このふたりは強い。喜多郎なんか、あんなにおちゃらけながらも友情に篤いところを見せられると、うっかりイケメンに見えてきてしまう勢いです。いやそれは言いすぎでした。すみません。


人間を滅ぼすとかいってるわりにどうもユルい魔王とのギャグストーリーをぼんやり眺めていたはずなのに、いつの間にか種族を超えた許されざる恋を追いかける少年の話になっていて、い、いったい何が起こったというんだ。
好きになっちゃったもんは仕方ないと思いますけど、しかし、紳士ははた迷惑な主人公ですね! 一度思い切りぶっ飛ばされてしまえばいいのにと思わざるをえませんでした。
いえね、恋に突っ走るのも、自分勝手を押し通すのも構わないのですよ。高校生ですもんね。
けれども、他人を守るとか抜かしていたくせに、自分勝手のために思いっきり周りを巻き込んでしまうのはどうもいただけない。あの格好良さはどこへ行ってしまったんですか。
泥にまみれるといえば聞こえはいいですけど、それにしては都合の良さが気になりました。どうしても無理を押し通すなら、それなりの理屈がほしかったかなあと思います。


勇者・赤井川さんはいいキャラしてましたね。バトルのときのラスボスぶりが光ってました。彼女が主人公で、敵をばったばったとなぎ倒していく話をぜひ読んでみたい。
どうも紳士のことは好きになれませんが、魔王との今後は気になるところですし、真衣とのことももっと掘り下げてほしいし、続きも楽しみにしています。


イラストはNOCOさん。赤井川さんの危険な表情にぞくぞくしました。
ラストの紳士と魔王の1枚は雰囲気が出ていて良かったですね!


桑園さんのヒロイン化を待っています。