まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

変態王子と笑わない猫。5

変態王子と笑わない猫。5 (MF文庫J)

変態王子と笑わない猫。5 (MF文庫J)

ストーリー
何かが吹っ切れた小豆梓は、毎日のように横寺にべったり張り付く大攻勢。
横寺は、彼女の笑顔に押され気味になりつつも、月子の無表情のプレッシャーに震える日々を送っていた。
そんなある日、月子が「大事な相談ごとがある」と横寺家を訪れてきて……。



面白かった! 小豆梓派には悪いけれど、月子ちゃんの魅力がぎゅぎゅっと詰め込まれていて大満足の1冊です。
今更ですが、横寺の言い回しが実に小気味良くて、ぐいぐい読ませます。改めて、上手いなあとしみじみ思いました。いつぞやの読みにくさは夢か、幻だったのか……。
時間旅行を通して次第に秘密が明かされていく構成もお見事。これまで気にかかりつつも放置していたもろもろが、今回で一度に腑に落ちました。作品全体のストーリーの上でも、重要な位置を占めるお話だったのではないかと思います。


月子ちゃんが可愛い。どうにかしてしまうレベルで可愛い。どうにかしたい。いやむしろどうにかされたい。
「NTTプロジェクト」とか、ちょっと、いやだいぶ、相当おかしいけれど、そんなところもまた愛おしい。
本音が隠されているはずなのにあっさり気持ちが読めちゃう。でもあくまで隠されている。そこがいい。
秘めたる気持ち、秘めたるヤキモチ、表に出ないからこそニヤニヤきゅんきゅんさせられる。
横寺の卓越した月子ちゃん観察眼だからこそ分かる部分も多いのでしょうけど。さすがは横寺さん、いい仕事してますね。
横寺は、言動のあまりの軽さに、ともすると適当人間であるかのように錯覚してしまうけれど、実は誰よりも周りをよく見ていて、自分の信念にしっかり従って行動しています。
油断していると格好良く見えてしまって困ります。いえ、事実格好良いとは思うのですが、素直に認めたくない!


記憶の食い違いと失われた過去。猫神の力で10年前へ飛ばされてしまったふたりは、それらの証拠を求めて筒隠家へ。
煮え切らないツカサさんの態度にはハラハラさせられました。母も娘も素直じゃなくて、なかなか先に進めません。
向き合うことのできない母と娘。でも、家族の絆は確かにそこにあって、後は少し手助けしてあげるだけ。
既になくしたものだと分かってはいても、一時の幸せや温かさがあるのなら、それはそれでハッピーエンドではないかと思うのです。
頼りになるのはやはり横寺でしたね。しかも大小ふたりも揃ってる。何これ月子ちゃん包囲網?
まだ6歳の横寺くんですが、子どもながらに早くもタラシの能力を身につけているのはさすが。三つ子の魂百までとはこのことかしら。


横寺陽人の危うさは、女の子のためになら自分を簡単に投げ打ってしまえるところにあります。
騎士道精神なんて言えば聞こえはいいけれど、自分を大切にしていない人に、どうして恋愛ができるでしょうか。
そんな横寺の危うさが、遂に現実の問題として、光の下にさらけ出されてしまいました。
5巻目の終盤にしてようやく明かされた重大すぎる事実。これまでのことと、これからのこと。そんな風に割り切れるものでしょうか。
みんなの幸せのために、横寺はこれからどんな決断をしていくのでしょうか。続刊が待ち遠しい。


今回もイラストが神がかっていましたが、特に最後の見開きには悶絶しきり。たまらん。