まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

アリス・イン・ゴシックランド 霧の都の大海賊

  • ストーリー

新しくスコットランドヤード本庁犯罪捜査部の配属になった、貴族出身の刑事・ジェレミー。
ロンドンの街角、殺人現場の近くで少女・アリスを拾ったジェレミーは、自分の屋敷で彼女をかくまうことに。
事件の捜査のため、上司に連れられたジェレミーが出逢ったのは、あの名探偵の妹・イグレインだった……。


切り裂き魔にスコットランドヤードに名探偵と、あらすじの時点でわくわくする単語のオンパレード。
なんでしょうねえ、19世紀末のロンドンって、もうそれだけでテンションが上がってしまいます。
テムズ川ビッグ・ベン、ロンドン塔、そしてベイカー街! うおおお、なんというドリーム!
そう、ベイカー街です。ホームズです。
ヒロインの1人であるイグレインは、なんとあのシャーロック・ホームズの妹です。
子孫だという設定でなら何人か思い当たるキャラがいますけど、妹というのは珍しいのではないでしょうか。
ホームズがいる世界というだけあって、レストレイド警部やハドソン夫人が堂々登場してきます。
それだけでなく、シャーロック・ホームズで描かれている事件がちょいちょいネタにされていて、元の話を読んだことがある人なら倍は楽しめるんだろうなあと羨ましくなりました。


イグレインは、兄譲りの推理力と行動力を備えたおてんばお嬢さん。
ちょっとした証拠を目ざとく見つけて主人公の経歴や家族構成をピタリと当ててしまうのはまさにホームズという感じ。とても楽しい。
表紙やピンナップではアリスばかりが目立っているから、てっきりサブヒロインの立ち位置かと思っていましたけど、期待を大きく上回る可愛さで一気にメインの座へ。
主人公のジェレミーは目的のためなら金に糸目を付けない貴族の次男坊刑事。
これだけだとただの嫌な奴ですけど、貴族のわりに俗物的なふるまいが好印象ですね。いざという時に特注銃を振り回して戦う姿が格好良い。
イグレインに対しては基本ツンですが、時折デレます。恋愛方面でもおいしいキャラですね。
アリスは物語の鍵を握っているのだろう、謎めいた少女。
素直で純真無垢、子供らしく可愛らしい女の子ですが、実はとある秘密が隠されています。
ジェレミーがなぜか彼女に固執していて、そんなジェレミーに嫉妬するイグレインにまたニヤニヤ。
ぞくぞくする秘密も明かされ、次からはいっそうの活躍を見せてくれそうです。


ホームズの他にも、あれとかそれとかの伝説的人物が登場してお祭り状態になってました。
ページ数からいえば薄めのわりに、推理あり、アクションあり、ギャグあり、シリアスありと、ボリューム感もたっぷり。
ロンドンの地図とかキーワード解説とか、ちょっとしたおまけもあって嬉しいですね。
まだまだ物語は始まったばかりで、気になる謎もたくさん残されているし、これからますます面白くなっていってくれることでしょう。
また楽しみなシリーズが増えました。次巻が待ち遠しい。


イラストは植田亮さん。透き通った色遣いが霧の都ロンドンにぴったり。カラーイラストがもっと見たいですね。
本文中の見開きはまさかのあのキャラで思わず笑ってしまいました。


シャーロック・ホームズは主に漫画で読んだんですけど、きちんと原作で読み直したくなりました。
古本屋で探してみようかな……。