まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

電波女と青春男SF(すこしふしぎ)版

  • ストーリー

親の仕事の関係で、叔母である藤和女々の家に居候することになった丹羽真。
叔母はひとり暮らしだと聞いていた真だったが、新たな我が家にはもうひとり、布団ぐーるぐるな電波女が住み着いていた。
どうやら叔母の娘らしい彼女・藤和エリオとの意思疎通をはかる真だったが……。


本編の最終巻と同時に1巻のリメイクを出すなんて、入間先生はやることが違うなあ。
今まで基本的に真の一人称で描かれてきたこの作品ですが、リメイクということで今回は三人称になっています。
独特の、理屈っぽくて回りくどいモノローグがないので、わりあいにあっさりした印象がありますね。
読みやすいといえばそうかもしれないけれど、あの地の文に慣れた読者にはちょっと物足りないかもしれません。


1巻が手元にないので細かいところは分かりませんが、大筋としてのストーリーはそれほど変わっていないみたいですね。
真が星中と電話してたり、ヤシロが既に登場してきたり、細かな違いはありますけど。青春ポイントがないのは結構大きいかな。
キャラたちの性格も、それぞれ少しずつ本編と違う部分が見えています。
1巻のエリオはとことん電波というイメージが強いけれど、今回はちょっと飄々としているような気が。
自転車にも乗ってるし、向こうに比べて電波が弱いのかな。いや、もちろん十分電波なんですけどね。
あちらよりもまだ会話ができそうに見えるからか、真の対応もいくぶん優しい。リュウシさんや前川さんよりも明らかにエリオを優先しているし。
真の一人称じゃないから真が優しく格好良く見えるだけかもしれませんが。
ああ、女々さんは変わってません。ぶれないな39歳。


これで3度目だけれど、本当にあのシーンは、スピード感といい爽快感といい、大好きです。
まさに青春の爆発ですよね。高校生という熱い年頃だからこそのノリといいますか。でも、よい子はまねしないでね。
微妙に8巻とのつながりがあったのが面白い。イラストのリトルスマキンには笑いました。
ヤシロの思わせぶりなことばを見るに、パラレルワールドとか、異次元とか、そういうものなのかな?


エリオ好きにはなかなかにおいしい、おまけの1冊だったかと思います。
今1巻のリメイクを書いた理由は想像するしかありませんが、もしかしたら、物語はまだまだぐるぐると回っていくということを伝えたかったんじゃないかと思います。
物語の終わりである8巻が、また新たな物語とつながっている。ずいぶん手の込んだ、素敵なメッセージじゃないですか。さりげなく表紙イラストもセットになってるし。
近いうちに1巻と突き合わせて違いを味わってみたいですね。


SFと書いて「すこしふしぎ」と読むのは恐らく、藤子・F・不二雄先生のオマージュ。趣味が合いそうです。