まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

『生意気なお嬢様を従順にする方法』感想

生意気なお嬢様を従順にする方法 (MF文庫J)

生意気なお嬢様を従順にする方法 (MF文庫J)

ストーリー
バーチャル美少女を愛する後阪広十は、先行販売で入手したAR装置を起動する。無数の光点はやがて人の形となり――「リ、リーナは……広十様だけの……メイドです……」俺と従順なAI美少女・リーナとのいちゃラブ生活、スタート! さっそくリーナのスカートを覗き込もうとする広十。だったのだが――「そこまでしてパンツが見たいとか、バカじゃないの?」なんとリーナは生意気なお嬢様・永羽星璃々七に乗っ取られてしまったのだ! やめろ! リーナの姿でゴミ虫みたいに見ないでくれえっ! でも待てよ、現実の璃々七には従順なAIの意識が宿って――? リアルとバーチャルが入れ替わる、新感覚ラブコメ開幕!

うおおー久しぶりの田口一先生の新作だ! 生意気お嬢様なヒロインと理想のAI美少女の中身が入れ替わってしまうドタバタARラブコメディ。
最新鋭で近未来なテーマを取り上げておきながらやってることは実にクラシカルなラブコメ。しかしこのベタさがいいんですよ!
主人公を毛嫌いしていたはずのお嬢様がまぁーチョロくて「ああ田口一だなあ」とほっこりしてしまいました。


バーチャル美少女を愛してやまない高校生・広十。最新のAR装置により、ついに自分の部屋に理想のAI美少女・リーナを顕現させることに成功する! ……のだけれど、アクシデントにより知り合ったばかりの生意気お嬢様・璃々七とリーナの中身が入れ替わってしまう!
いやー、ARやAIバーチャル美少女となると今最前線にある話題だけれど、それをもってきて起きる事件が入れ替わりですよ。ベ、ベタ~! すごいベタ!
主人公をご主人様と呼ぶ従順メイドなAIと、主人公を変態と罵る高飛車なお嬢様とが入れ替わっちゃって、きゃーわたしの身体で抱きつかないでーとか、どんだけ教科書的なラブコメディなんですか。最高かよ……(ここまで全部褒めてる)。
圧倒的面白さでぶちのめしてくる衝撃の1作! というわけではないかもしれないけれど、こういうラブコメが読みたいときがあるんだ。現代人の乾きを癒す一滴の蜜なんだ。
もちろんベタならばそれでいいというわけではなく、ベタな材料をきちんとオリジナルの料理に仕上げてくれる安定した筆力あってこその、この満足感なのですよ。


入れ替わりが解消できないまま、世間を知らないリーナとともに学校に通ったりお出かけしたり、そのたびに端末から璃々七の叱責が飛んだり。そんな生活の中でリーナは人の心というものを学んでいき、お互いに理解しあえなかった広十と璃々七は少しずつ相手の良さを知っていく。
楽しくもどこかに不安の残る日々は、しかしやはり、予期されていた悲劇の方向へと進んでいってしまうのです……。
実在の人間である璃々七と作られたAIであるリーナとでは、璃々七の方が重要視されるのは当たり前のこと。でもそんな簡単に割り切れるのか? あれだけ自分を慕ってくれて、人の心まで理解しつつある優しい女の子を?
何もできないままに期限は迫り、そして。……まあ結末としてはこうなるよなあという感じではありますが、ラストの一捻りが効いてて良かったです。
欲を言うなら、結局ギリギリまで広十は流されていただけという印象があったので、少しは主人公らしいこともしてほしかったかな。
事件は一段落したものの、恋愛方面はまだまだこれから。バーチャル美少女脳な広十の心をどう璃々七が動かしていくのか、続巻に期待しています。続くよね?


イラストはねづみどしさん。この表紙好きですわー。髪の毛いじってる璃々七様。
そういえば結局リーナのパンツイラストはなかったな(悲しみ)。


トイレを我慢してる女の子をおんぶしながらこの畜生発言、ほんと広十いい根性してるわ……。なおシチュエーションは羨ましいです。

『教え子に脅迫されるのは犯罪ですか? 2時間目』感想

ストーリー
「夏は水着の小学生に限る」と綴ったのは清少納言である――。中高受験指導塾で働く塾講師・天神の夏は忙しい。プールでスクール水着やおしゃま水着のJS(10歳)に密着されたり、某クソ悪魔さん(14歳→15歳・JC)の誕生日で“初めて”を奪ったり、真夜中に全裸のパジャマパーティに侵入したり、社会的に綱渡りのお仕事ばかり。そんな中、現れたのは――
「生徒にリアルな愛情を抱いていると公言できる?」「できないが?」「はいクソザコロリコン
――ちょっぴり辛辣な北欧天使ちゃん(14歳・JC)! 新しい教え子には、秘密がふたつ…!?
子供を愛する全ての大人に捧ぐ、ガチでリアルなお仕事×年の差ラブコメ、夏合宿編の第二弾!

塾講師と天真爛漫なJSたちと小悪魔JCとが織りなす教え子ラブコメ第2弾。
前回思わせぶりなラストを迎えた星花とのきゃっきゃうふふな毎日が幕を開けるのかと思いきや、新しいJCが出てきちゃうもんなー! ホントさがら総そういうとこあるよなー!
新たにやってきた子どもたち問題を描く一方で、塾講師と作家の二足のわらじを続ける天神の苦悩も描く。つくづく仕事って簡単じゃない。


夏だプールだ小学生だ! 塾の夏は書き入れ時、小学生たちを連れて入った市民プールで水着なJSたちとぴとぴと密着! これも立派な塾講師の仕事……なんだろうか……? ポリスメーン!
凛やひらりやリョウをはじめとした調布校の面々は毎度の仲良しぶりだけれども、府中校からやってきた新顔たちはなかなか馴染めず。子どもの世界もなかなか難しいもんだね。
そんな中でもひときわ目立つJCJS姉妹・冬燕と桃夏。妹がいじめられているのではないかとわざわざ合宿先にまで顔を出し、どこかの悪魔JCと同じように天神を連れ回しては調査に励むどこかズレた姉・冬燕との毒舌満載なやりとりが楽しい。天神先生、おかしなJCに捕まりすぎでしょ……(羨ましい)。
一方で星花との個人レッスンも継続中。「悪い女の匂いがします」と夜のファミレスでJCにYシャツをくんかくんかされるシチュエーション、ちょっと危険すぎませんか。星花がすっかり天神を自分のもの扱いしているのが微笑ましくてよいです。想いが一方通行すぎて切ないけどね……。


作家と会いたいという星花のリクエストにお応えし、天神の作家仲間が登場しました。
それぞれ才能のある2名と、デビュー作以降はくすぶっている天神と。
この差はどこでついたのか? 塾講師という仕事を続けていることは、作家としてやっていく上で正しいことなのか? シビアすぎる仲間作家の言葉が刺さる。
でも、冬燕&桃夏姉妹の問題に真正面から向き合う姿や、なんだかんだで星花にずっとつきあっている姿なんかを見ていると、塾講師という仕事も間違いなく天神の大事な一要素であって、作家と塾講師とどっちを選ぶとかじゃないんじゃないかなあなんて思えてきます。
まあね、才能のことなんて知らないからね。同業者からしたら甘いって言われるのかもしれないけど、やっぱり天神には子どもたちに誇れるスーパーマンであってほしいんですわ。
ラストではプチ修羅場が開幕! やったぜ2人のJCと三角関係だ。次巻はラブコメ的な進展にも大期待ですね!


渡航先生の巻末解説、さがら先生との仲の良さがにじみ出ていてニヤニヤしちゃう……///

『はぐるまどらいぶ。1』感想

はぐるまどらいぶ。 1 (オーバーラップノベルス)

はぐるまどらいぶ。 1 (オーバーラップノベルス)

ストーリー
アンティ・キティラ! 15歳の誕生日です!! 魔法の使えない、食堂の看板娘だったんだけど! 魔無しにとっての最後の砦、能力おろしで得たスキルは――は、“歯車法”!? なんじゃそりゃぁああ!? “金の歯車”しか、出せないスキルって!? 一度は落ち込んじゃった金の髪の看板娘。でも、両親に超励まされ! 冒険者、目指そうって、決っめまっしたぁぁあああ―――!! ……ん? なんだ? この王冠みたいな歯車?
『――――クラウンギアによる:髪型分析完了。――――"ツインテール"へ移行します。』
「しゃ……しゃべったッッ!?」
突如現れた王冠っぽい歯車“クラウンギア”と、黄金の髪と瞳の少女"アンティ"が織り成す、どこにもない、ここだけの“物語”――――!! アンティの、アンティだけの冒険が今、始まる!

ラノベ人気投票『好きラノ』 - 2018年上期でいきなり1位に躍り出た上、タイムライン上のラノベ読みたち(僕含む)がことごとく存在を知らなかったという、なろう発の超新星
歯車を出す謎の魔法(?)しか使えない女の子が持ち前の明るさと元気と創意工夫で街を救うハイテンションファンタジー
面白かったです! 短文が連続するせいで、かなーり人を選びそうな文章ではありますが、それが逆に文章全体に勢いを与えてくれていて一息に読めてしまいました。


主人公のアンティは15歳の金髪村娘。「能力おろし」で彼女が手に入れたのは、火の魔法でも水の魔法でもなく、どこからともなく歯車を生み出す「歯車法」なる未知のスキルだった!
楽しみにしていたのになんだこの残念スキルは、と泣いてしまうアンティ。でも両親からもらったアイテムと組み合わさって、やたら便利なスキルへと発展を遂げてゆくのです。
基本はアンティの一人称視点でずっと進んでいくのですが、まずなんといっても、このアンティという主人公が非常に魅力的。
魔法の学校では落ちこぼれで、せっかく手にしたスキルも謎の歯車法で、と散々だけれど、優しい両親に恵まれてめげずにまた立ち上がる元気と、街の子どもたちに慕われるまっすぐな正義感と、そしてここぞという場面での勇気を持ち合わせている。エネルギーに満ちたヒロイン像だ。
かと思いきや、呪いの仮面を怖がったり、自分の金髪の美しさに無自覚だったりと、年相応の女の子な姿も見せてくれる。うーん好き。


アンティにあまり学がないせいなのか、彼女の一人称視点はかなり単純な文の連続でできています。台詞回しも同様で、正直描写不足や読みにくさを感じる部分も結構ある。でもいざエンジンがかかったとき。歯車法的にいうと歯車が回りはじめたとき、この文章は劇的に魅力的に変化するのです。
街を襲うモンスター。命の危機が迫る子どもたち。彼らを救うために1人走る、走る、走るアンティ・キティラ15歳。歯車装着済み。「きゅいいいいいいいいん!」と歯車を回してアンティが森の中を滑走する場面の疾走感たるや! アンティの叫びもまた熱い。まさに「叫び」という感じで、こう、ぐわっと胸に迫るものがある。これは、熱烈なファンが付くのもわかるなあ。とにかくハマるとクセになる文章でした。
Web発作品の常で、1巻の終わりはもろにエピソードの途中で切れてしまっています。旅立って早々妙なことに巻き込まれてしまったアンティの明日はどっちだ。続きが楽しみですね。


イラストは杉浩太郎さん。アニメ的でちょっと童話っぽくもあるタッチのイラストですね。
躍動感のある表紙が好きです。アンティかわいいのう。


クラウンちゃんはAI萌えの王道を行ってるな!!