まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

『あまのじゃくな氷室さん 好感度100%から始める毒舌女子の落としかた』感想

ストーリー
完全無欠な優等生だが、高圧的で性格はキツく毒舌ばかりの生徒会長・氷室涼葉。そんな彼女に想いを寄せる副会長・田島愛斗は、ある日彼女の言葉の裏に隠された“本当の気持ち”が聞こえるようになっていた! そんな涼葉の本音――それはなんと、あの辛辣でキツい態度や毒舌の何もかもが建前で、本当の彼女は愛斗にべた惚れだったのだ! お互い両想いとわかって喜ぶ愛斗。解答付きの恋愛ならハッピーエンドなんて楽勝だよね!ということでさっそく告白をしたものの……断られちゃった!? MF文庫Jが贈る、答えがわかっているのにすれ違っちゃう捻れ系青春ラブコメ開幕!

MF文庫文庫Jライトノベル新人賞<審査員特別賞>受賞作品。
表向き超ツンドラ少女のデレデレすぎる内心が丸聞こえに! よっしゃー両思いだーと喜んでいたら告白への返事はまさかのNO!
完全両思いなのにヒロインがポンコツすぎて恋が始まらないじれったすぎるラブコメディ、存分に楽しませてもらいました。


恋の神様の力によって、片思い中の女の子・涼葉の本心を聞けるようになってしまった主人公の愛斗。
顔を合わせれば冴え渡る毒舌に冷たい視線をぶちかましてくる涼葉だけれど、本心では愛斗にベタ惚れだった!
ということでめでたく両思い、ふたりは付き合いはじめて幸せに暮らしました……ならよかったのに、本音を頑なに閉ざし続けてきたせいで、愛斗の告白に対して気持ちとは裏腹にお断りの言葉を突きつけてしまう残念すぎる涼葉さんなのでした。いや、これもうあまのじゃくとかいうレベルじゃないだろ……。


ただただ面倒くさいヒロイン・涼葉なんですが、可愛いか可愛くないかでいうとまあやっぱり可愛い。愛斗がポニテ推しを宣言したら分かりやすくポニテにしてきたりするところ、チョロさが極まっていて好きです。
それに、表のツンドラモードはともかく、一喜一憂がハイテンションに過ぎる本心の涼葉を見ていると、微笑ましい気分になってきます。いやまあ、本心がわかるから可愛いだけなんですけどね。これ本心がわかんなかったら本格的に嫌な女だからね。勘違いしないでよね!
愛斗がどれだけ頑張って買い物にこぎつけても、デートに誘おうと思っても、こちらの考えから遥かぶっとんだ方向に失敗してくれやがるのが涼葉さんというヒロイン。こんなんなら、ギャルながら愛斗となんだかんだでいい感じになりつつある砂城さんの方がいいんじゃないの? と思っちゃうんだけれど、それでも愛斗が好きなのは涼葉なんだから仕方ない。恋ってほんと、理屈じゃないワね。
両思いなのに悠長すぎるまったりニヤニヤ恋愛模様、今後の展開も楽しみにしています。


イラストはうなさかさん。表と裏の氷室さん、どちらもそれぞれの魅力があって良かったです。
でもやっぱり僕は砂城のキャラデザが好きかも。最近ギャルヒロイン熱が高まっているんだ……。


ふと冷静になって考えたけど、神社のお賽銭に5万円つぎ込む時点でだいぶ痛いですねこの子。

2017年イチオシの新作ライトノベル10作

はや気づけば大晦日、ということで毎年恒例のベスト記事書きます。
今年は本当にラノベが読めなかった年で、正直全然納得がいってない! 今年出たラノベ一覧を見ながら書いてるんですけど、あーあれも読んでない、あれも積んでる……としょんぼりしています。不甲斐なし!
ということで母数は少ないけれども、以下に挙げる10作品は間違いなくめっちゃ面白かったので、未読のものがあったらぜひ!
ちなみに順番は発売日順。



『86―エイティシックス―』(電撃文庫

方々で絶賛されている中、今さら紹介するのも気恥ずかしいんですが、やっぱりなんだかんだで今年を代表する新作はコレだと思います。
前線で使い潰されていく少年兵たち。遠方から司令を出すことしか許されない少女指揮官。埋めがたい心の距離が切なく苦しく、ようやく少しつながったかと思いきや、またあっけない別れがやってくる。熱のこもったSF戦場物語でした。空白の2年間を描いた2-3巻も格別の出来。



『キラプリおじさんと幼女先輩』(電撃文庫

電撃大賞作からは1作品だけにしようと思っていたんだけれど、外せなかった。今年の新人賞で一番愛着がある作品はコレかも。
女児向けアーケードゲームを通して描かれる、ツンな幼女先輩との友情。協力プレイの場面の熱量が半端じゃなくて、もはやスポ根ものと言ってもいいくらい。キラプリは実質スポーツ! 3巻がとにかくいいので読んで。そして泣いて。



『読者と主人公と二人のこれから』(電撃文庫

読者と主人公と二人のこれから (電撃文庫)

読者と主人公と二人のこれから (電撃文庫)

これ! これが僕が読みたかった青春学園ストーリーだよ! もう好みにドストライクすぎて完全KOですよ!
とある小説のファンの少年と、その小説のモデルとなった少女が、あまりに不器用に、それでいてじっくりと心を通わせていくじれったい恋愛模様。胸をかきむしりたくなるくらいにキュンキュンする。サイコー。



『美少女作家と目指すミリオンセラアアアアアアアアッ!!』(角川スニーカー文庫

さすがの春日部タケル作品というべきか、ギャグに次ぐギャグの応酬でひたすら笑えるラノベ作家&編集モノ。
天才が花開く1巻もいいんだけど、天才ではない人間が四苦八苦しながら作品を生み出していく2巻の内容が白眉。



『ワキヤくんの主役理論』(MF文庫J

ワキヤくんの主役理論 (MF文庫J)

ワキヤくんの主役理論 (MF文庫J)

ここのところ「ちょっと捻りをきかせた学園ラブコメ」が結構出ていて、ラブコメ大好きマンな僕はホクホクしてるんですが、中でもニヤニヤ度が高いのがコレ。
クラスにバイト先に趣味嗜好まで同じ、なのに生き様だけが真逆。口論ばかりしているけれど傍から見たら熟年夫婦という「喧嘩するほど仲がいい」を地で行く主人公とヒロインから目が離せない。



『真面目系クズくんと、真面目にクズやってるクズちゃん #クズ活』(講談社ラノベ文庫

こちらもちょっと捻った学園ラブコメ。いやー持崎湯葉先生はずっと応援してきたんですけど、過去作の中でもトップクラスに面白かった!
クズな女の子と聖人君子な女の子、両極端なダブルヒロインに挟まれた中途半端な真面目系クズの僕、という構図が楽しくてたまらん。今一番続きを待ってる作品のひとつ。



『幼馴染の山吹さん』(電撃文庫

幼馴染の山吹さん (電撃文庫)

幼馴染の山吹さん (電撃文庫)

上2作品が捻ったラブコメなら、こっちは直球ストレートな青春学園ブコメ
一度疎遠になった(けど実はお互いを想い続けていた)幼馴染と、ミッションという名のもとにイチャイチャイベントをこなしていく……もはや陳腐とさえ言ってもいいくらいにベタまっしぐらなラブコメ。だけどそれがいいんだ! 素晴らしく楽しいんだ!



『図書迷宮』(MF文庫J

図書迷宮 (MF文庫J)

図書迷宮 (MF文庫J)

今年読んだラノベの中では、一番の挑戦作と言っても過言ではない。かもしれない。本が読者に呼びかけてくる二人称小説にして、作中の本と実際の本を連動させることで読者を緊張感に導くメタ小説。
とことん読者を翻弄した挙句に最後には愛の物語へと落とし込まれる俗っぽさがたまらなくいい。



『6番線に春は来る。そして今日、君はいなくなる。』(角川スニーカー文庫

大澤めぐみ先生の文章は本当に喉越しがよくて素晴らしいんだけれど、特に高校生がいい。大澤めぐみの高校生はすっごく高校生してる。何言ってるかわかんないと思うけど読めばわかる。
その辺にいる高校生たちが、あたりまえの楽しかったり苦しかったりする日々を送って、どうでもいい雑談をして、出会って別れる、それだけの話のはずなのに、なぜだかやたらと胸に迫る。傑作。



『僕の知らないラブコメ』(MF文庫J

僕の知らないラブコメ (MF文庫J)

僕の知らないラブコメ (MF文庫J)

嫌なことをスキップする力。それ自体は魅力的なのだけれど、時間をスキップするということがどれだけ切なく恐ろしく、取り返しのつかないことなのかを見事に描きだす直球青春ストーリー。
無気力で逃げ腰で目標ミドリムシだった少年が勇気を振り絞って一歩踏み出す、その姿をぜひ見てもらいたいと思います。



(番外)
『ショートストーリーズ 僕とキミの15センチ』(ファミ通文庫

1作の小説ではないため番外として。アンソロジーってこんなに面白いもんだったっけと知見を新たにしてもらいました。やっぱファミ通文庫はいい作家陣を抱えてるわ……。
あとまあ、なんというか、『“文学少女”』のSSが読めてほんとにほんとに幸せでした。



以上! 今年はブログもほとんどサボっちゃったし、ラノベ読みとしては非常に悔いの残る1年でした! 来年は絶対にもっと読む! とりあえず新人賞コンプじゃー!
よいお年を。

『ワキヤくんの主役理論2』感想

ワキヤくんの主役理論2 (MF文庫J)

ワキヤくんの主役理論2 (MF文庫J)

ストーリー
青春公園での一件の後、俺はこれまで通り、青春を目一杯楽しんでいた。学校で勝司たちと他愛も無い話をしたり、駅前にやたら良い雰囲気のおでん屋台を見つけて、店主の少女・赤垣此香と友人になってみたり。――しかし、日常は唐突に破られた。「我喜屋先輩は姉が好みではありませんか?」突如やってきた、叶の弟・望くん。彼の目的が全く解らないまま、何故か目の前でさなかとデートをすることに。しかし、さなかも何か思うところがあるようで……? 主役男と脇役女によるおかしな青春勝負、第2弾。今回はさなかが主役……!?

今回も未那と叶の全力すれ違いラブコメをニヤニヤ楽しもう! と思って読んだら、存外にさなかがヒロイン力を発揮してきた!
ま、まさか君、ヒロインだったのか……? てっきりかませ全開ルートかと思っていたのに(酷)。
しかしさなかもさなかで面倒くさい女の子ですね。あーもう、誰も彼もがしち面倒くさい。思春期だの青春だのってやつはこれだからよぉ!


2巻にしてすでに安定感さえ醸し出している未那と叶のコンビ。
同じ屋台にそれぞれ導かれて店内で遭遇しちゃうくらいに趣味が似通っているのに、顔を突き合わせては息ピッタリに口喧嘩しちゃうんだからもう。
心の底からくっついちゃえばいいのにと思うんだけれど、本人同士はわりとガチで嫌がっているのが笑える。永遠にやってなさいって感じ。
そんな両者の関係をちょっと動かしそうな叶の弟・望くん。まだちょろっと出てきて思わせぶりなことを言っていっただけですが、今後は彼がキーマンになりそう。


傍目から見れば面倒くさいことこの上ない未那も叶も、確固たる信念を持って人生を謳歌しようとしているというのは間違いないこと。
そして、そんなふたりの姿に一人ダメージを受ける少女・さなか。
別に彼女は凡人でもなんでもないと思うんですけど、自分がそう思っちゃうんだからしょうがないですわな。それに、輝いてる(ように見える)隣人にショックを受けちゃう気持ちは分かる。
そんな思い悩む彼女に対し、実際にアプローチをかけることのできる未那はやっぱり主役理論者だよなと思いつつ、なんだかんだで躊躇する彼の背中をさくっと叶が押しているあたりにまたニヤニヤさせてもらったのでした。
しかしこれ、主役理論の持ち主が増えたってことかい? さらに面倒くさくなること請け合いじゃないですかー! ぎゃー!


ぶっちゃけ、屋台でおでんのロマンも河川敷で雑炊のロマンもわかる……めっちゃわかるっ……。