まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

帰宅戦争 帰りたいんだけど戦争起こしてもいい?

ストーリー
過去の事件から「青春」や「仲間」というものが信じられなくなった佐藤太郎。
そんな太郎が入学した高校は「青春の謳歌」が大正義とされる青春バカ野郎の巣窟だった。
全員部活に所属しなければならないという校則に反発し、帰宅部の設立を画策する太郎だったが……。



第28回ファンタジア大賞<銀賞>受賞作品。1000人の生徒たちの追撃をくぐり抜け、18時までに校門から脱出することを目指す帰宅バトルコメディ。
強要される青春から全力で逃げ出して帰宅する……アホらしいけれども熱いストーリーでした。
目標が自堕落だろうがなんだろうが、それが自分で選んだ道ならばかくも輝かしいのだ。


太郎が入学した私立帝成高校は、青春することが校訓に掲げられていて、全校生徒が部活に力を入れまくっている青春バカたちの学園です。
そんな中、太郎と、メインヒロインの凜花は、持ち前の人間嫌いを発揮して帰宅部の設立を目指し活動開始。
校訓に背く部活だけれど、18時までに部員の誰かが校門を出る=「帰宅戦争」に勝つことができれば設立が許されるということで、帰宅戦争への勝利を目指し毎放課後に戦う帰宅部員4人+1人の戦いが始まりました。
確かに青春は素晴らしい。みんなで一緒に夢を追いかける姿もまた素晴らしいものです。しかし、必ず青春しろと言われると、それは違うだろと思ってしまうのもまた人情。
ちゃんと部活をやっている方が偉いみたいな、そんな風潮に真っ向から背を向けて、家でぐだぐだするために全力で頑張る……ちょっと本末転倒感もありつつ、そんな少年少女がいてもいいじゃないかと、つい応援したくなってしまうのでした。


最初の部員は司令塔の太郎と、かつて天才声楽家として活躍していた凜花、不幸体質なフランス人少女のイリス、スポーツマンの道をドロップアウトしてきた少年・織田の4人。追加で、太郎の幼馴染にして学年トップの秀才・ひなぎくが、太郎を更生させるためという目的で入部してきます。
初めこそ他の生徒たちからただ逃げるだけだった(そしてすぐに捕まる)けれど、だんだん策を練るようになってきたり、煙幕やトランシーバーや監視カメラまで使いはじめたりして、次第に帰宅力が上がっていくのが面白かったです。
対する部活生徒たちの方も、竹刀を振り回してくる剣道部に、平然と矢を打ってくる弓道部、茶道具をぶん投げてくる茶道部など、部活ごとのありえない戦いぶりに笑わせてもらいました。
策を凝らしてもやはり1000人の壁は厚く、もうだめだと諦めかけてしまう一同。でも、追い詰められたところからがまた勝負!
佐藤の過去の失敗、凜花が抱えるしがらみ、ひなぎくの思い、そういった全てに決着をつけるための最終決戦は、なかなか燃えるものがありましたね。
さて、今回で目的を達成してしまったわけですが、続刊はあるのかな? 個人的にはもっともっとロリ可愛いイリスちゃんの活躍が見たいのです!


イラストはちりさん。イリスちゃんがロリ(略)。
他の部員たちや帝成四天王の姿も見てみたいですね。


吹っ切れたひなぎくさん、ちょっとバイオレンスすぎませんか……!?