まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

吸血鬼になったキミは永遠の愛をはじめる(1)

ストーリー
バスケ大好き少年の詩也は、ある日通り魔に刺され、謎の少女に命を救われる。
しかしそれ以来、彼は人間ではない何物かになってしまった。
バスケも続けられず転校したその先で、詩也はマリア様を思わせる綺麗な先輩に出会うのだが……。



野村美月先生×竹岡美穂さんの新シリーズ! もはや読まない理由がない!
今回のお話は演劇ものです。吸血鬼になってしまったことを思い悩む少年と、そんな彼を演劇の道へと誘い込んだ少女との淡い青春ストーリー。
古典作品をネタにして物語を組み上げることをお家芸としている野村先生ならではの、ひと味違う劇が楽しめました。
もちろん恋愛方面も素晴らしくて、めちゃくちゃきゅんきゅんさせられちゃいました。もうたまらん!


なんといっても、主人公・詩也とヒロイン・綾音の関係がいいですね。
好きだったバスケをやめ、転校先でわけもわからぬまま演劇部に入れられてしまった詩也。
自らの高身長のせいで劇の相手役に恵まれず、詩也と出会ってようやくメインヒロインを演じる機会を得た綾音。
パッと見は、面倒見のいい綾音が、演技ができなかったり吸血鬼のあれこれに悩んだりする詩也のことを、健気に支えているようにも思えるけれど、実は綾音からしても詩也のことを誰より必要としている。
ただ身長のつりあいが取れて、見た目も悪くないからという理由だけでパートナーに選ばれた、いわばビジネスライクな出会い。でもそれはまさに運命の出会い。
演劇の練習をしていく中で、相手の謎が気になりだして、いつの間にかお互い惹かれあっていくほの甘い恋愛模様には、ただため息をつくばかりです。
それにしても綾音は実に可愛らしいですね! 年上で包容力もあるのに、なぜか「かわいい」と思わされてしまう天然の言動の数々がとってもずるい。野村先生は、魅力的な先輩キャラを描くのが本当に上手いと思います。


本物の吸血鬼である詩也の役は、よりによってドラキュラ伯爵。
劇中でのドラキュラ伯爵とミナの激しい恋愛は、詩也と綾音のそれとは正反対だけれど、詩也が演じることで、伯爵も詩也と同じ悩みを抱えていたのではないかと思えてくるから面白い。
詩也も綾音も、演劇の内容と実生活をやたら結びつけて考えていて、いやいや影響受けすぎだろ、とも思えるのですが、それだけ入り込んでいるということなのかもしれません。
この劇さえ成功すれば、他のあれもこれも全部上手くいくに違いない! みたいな。ある意味単純な、こういう考え方って、少年少女ならではの情熱の燃やし方という感じで、見ていて清々しい気持ちになりました。


いいもの読んだな、と素直に思わせてくれる作品でした。また発売日を待ち遠しく思うシリーズが増えてしまった。
次巻での演目は「マイ・フェア・レディ」だそうで、出会いの次に詩也と綾音を待ち受けるものが何なのか、今から楽しみでなりません。
エピローグ後のオマケでちらっと描かれた、綾音の妹の理歌のことも気になります。つんとした外側に隠れた本音を、いつ見せてくれるのでしょうか。期待が高まります。


イラストは竹岡美穂さん。これから毎回違った劇のイラストが見られると思うとテンションが上がりますね!
綾音さんの、その、魅惑的な某部分についつい目が行ってしまうのは、仕方のないことだと言えましょう。


マンガ化? アニメ化? いや、早急な舞台化が待たれる。