まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

俺の妹がこんなに可愛いわけがない(12)

ストーリー
クリスマスイブ、桐乃を誘って東京へ繰り出す京介。
原宿や秋葉原を回り、最後にふたりはスカイツリーの展望台へと上る。
そこで京介は、桐乃へとある告白を切り出すのだが……。



祝完結。1巻が出たのが2008年ということですが……いやはや、もう5年も経っていたんですね。
新刊が出るたびに周囲で散々騒がれていたのを少し冷めた目で眺めていたものですが、まあなんだかんだ言って読めば(ちょっと悔しいくらいに)面白かったし、最後までしっかりリアルタイムで追いかけられるくらいには好きだったのだろうと思います。ちょっとしんみりしますね。
さて最終巻。いよいよ京介がひとつの答えを出しました。敢えて言わせていただきます。最っ高。


桐乃、あやせ、そして黒猫。それぞれとの過去を振り返りながら、ひとりひとりとの物語に決着を付けていく京介。
もうみんなばかみたいに可愛くてね。嫌になってしまいます。なんで選ばなきゃならないんだろうって。
京介のことだから、最終的には誰かを選ぶんだろうということは分かっていたはずなんですけどね。
それにしても凄いのは、ほんとうにその直前まで、彼が誰を選ぶのか分からなかったということです。誰か突出してくっつきそうな子がいてもよさそうなもんですが、ここに麻奈実を合わせた4人の中からならば、誰が勝っても驚かなかったことでしょう。
個人的にはもっと分かりやすく「メインヒロイン」がいる方が好みなんですが、最終巻まで分岐点をもつれ込ませたことで、これ以上なくドラマティックなお話になっていたことは確かです。お見事という他ありません。
ああ、しかし切ないです。特に三章はひどい。私は彼女のことも大好きだったので、思い出が千切れていくあのシーンなどは結構込みあげてくるものがありました。これはずるいでしょう。
正直言って、純粋にヒロインとしては二章と三章の子の方が好きだし、可愛いと思います。いえ、勝った子のことも好きなんですけどね。比較の問題としてね。
でも、ずっとこの物語を追ってきた読者として、いちばん納得のいく選択は間違いなくこれでした。京介と他のどの女の子がくっつくことになったとして、その女の子は恐らく相当に可愛く描かれたことでしょうが、たぶん心のどこかにモヤモヤしたものが残ったに違いありません。
この選択が最後に待っていたからこそ、これまでの紆余曲折にもしっかり意味があったのだと感じています。メインヒロインは表立っては決まっていなかったけれど、今となってみれば、この物語にとってはそれは彼女でしかありえなかったと信じられるんだから、不思議なものです。


ネタバレ防止のこともあり、後半についてはあまり語ることもありません。さんざんイチャイチャしやがってこのやろう、ってところですか。
この結末には多少思うところもありますが、私はハッピーエンドだと思っています。
かなりゴタゴタドロドロとしたお話を綺麗にまとめた上で、多少の切なさを感じさせつつも満足感を与えてくれ、見えない未来への想像もかきたたせてくれる素晴らしい終わり方でした。参ったな。まるでこの作品の大ファンみたいじゃないですか。
もはや言わずもがなですが、かんざきひろさんのイラストも、最後までとても良いものでした。見開きの1枚と最後の1枚は、この最終巻になくてはならないものだったでしょう。
楽しい作品をありがとうございました。いつかまた、最終巻の内容を忘れかけた頃に、本棚から引っ張りだしてまとめて読んでみようかなと思います。


その特典小説はちょっとばかし卑怯ではなかろうか。