まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

楽園島からの脱出

楽園島からの脱出 (電撃文庫)

楽園島からの脱出 (電撃文庫)

ストーリー
生徒からプレイヤーを募り、リアルなゲームを開催しているサークル、「極限ゲームサークル」。
そのサークルのスポンサーが主催する大規模ゲームイベントに、校内の男女100人が招待された。
ゲームのクリア条件は無人島から脱出することで、勝利者には百万円以上の賞金も出るらしく……。



えぐっ。土橋先生の作品を読んだのは久しぶりですが、心をガリガリ削ってくるなあと改めて思いました。
もちろん、そこがたまらなく魅力的なところなんですけどね! 別にドMじゃないです。違いますったら。
男子50人、女子50人が無人島に放り出されて、内容も詳しくは知らされぬまま、脱出を目指すゲームイベント。
それだけ聞くと何やら楽しそうですけれども、男女でペアになることと、男子と女子で役割が明確に異なるということがルール上決定づけられていることで、ただの脱出ゲームとは全く異なるクリア方法、選択肢が出てきています。
単純にパズルやクイズを解いて脱出するだけでは大勝利を収めることはできません。人間同士の駆け引きや、暴力とまではいかないまでもそれに近い圧力、集団の力など、人と人との関係が大きな意味を持ってくるのですね。
対人ゲームの醍醐味とも言えますけれど、しかしそれにしても、このゲームルールはひどい。明らかにこの100人の中で上下関係を生み出そうとしているシステムだということが分かる。
力を行使する者、行使される者、従える者、従う者。「ゲームのルールに則っているから」という理由で、暴力が抑止力として平然と使われている状況に、生理的な嫌悪感を覚えます。企画者の悪趣味さが伺えますね。


キャラクターが多くて最初は結構混乱しましたが、みんな個性的なためかすぐに慣れました。
とりあえず主人公(?)の沖田はなんですか、鬼かなんかですか。プロローグの時点でもうひどかったよ! 端的に言ってゲスいよ!
ゲームのルールの範疇でゲームを攻略するためになら何をしてもいい。そりゃまあ、その考え方も分かります。
分かりますけど、相手は人間で、しかも明らかに狂ったゲーム設定の中で、それを貫けるのはやっぱりおかしい。
沖田はあくまで理性的にぶっ壊れているんですね。見た目はちょっと軽めの少年としか思えないからまたタチが悪い。周りのプレイヤーが恐れるのも分かる。
彼が全てを掌握してゲームを支配する姿が見たいような気もするけれど、あんまり応援したくはないキャラでもありますね。
逆に好感度が高いのは斉藤や香緒里でしょうか。モラルということばが決定的に欠如したようなこの島で、斉藤の安定した「一般人」っぷりにはほっとさせられます。
しかし彼のような人間では、やはりこのようなゲームは切り抜けられないんだろうなあ。できるだけ前線に残って、私の気持ちの代弁者として活躍し続けていただきたいものですが。
あと気になるキャラは梨央、神楽坂、花穂あたりですかね。奇しくもみな女の子ですけれど、それぞれそこはかとない危うさがあって、放置しておいたら大変なことになっていそう。神楽坂なんかは、もしかしたら沖田以上に危険な存在なのかもしれません。


男女の性の違いをやたら強調してきていたのが多少鼻につきましたが、まあ、ここはファンタジーでの出来事ということでひとつ。これからも男と女の性差が重要なテーマになってきそうですね。
脱出はもはや半分どうでもいい感じになっちゃってる気もしますけど、とりあえずゲームの内容も明かされてきたところで、今後の展開がどうなっていくのか楽しみです。また新たなルールが追加されたりするのかな。
そして何より、最終的な勝利は誰の手に舞い降りるのでしょうか。ううん、わくわくしますね。


イラストはふゆの春秋さん。淡くて綺麗なイラストを描かれる方ですよね。
最後の梨央は非常にエロチックで見惚れてしまいました。表情がいい。


え、女の子にスタンガンで攻撃されるのってご褒美じゃないんですか?