まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

僕の妹は漢字が読める2

僕の妹は漢字が読める2 (HJ文庫)

僕の妹は漢字が読める2 (HJ文庫)

ストーリー
歴史の書き換えにより、萌え要素が奪われてしまった23世紀。
ギンたちは、歴史を書き換えた犯人を追って21世紀に舞い戻る。
犯人の手がかりがなく困る一行だったが、そこに23世紀の文章で書かれた謎の手紙が届いて……。



きっと来るであろう衝撃に向け、「さあ読むぞ」と心を落ち着けて、紙をめくって、1ページ目で噴き出しました。
いやあ素晴らしいですね。なんて言うんでしょうねえ、「とりあえず出だしで一発決めてやったぞ! さて後はどうしようかな!」みたいな、潔さがたまらない。
全力の悪ふざけ? エンターテイメント? ことばはどれでもいいですけど、読者を楽しませたいという心意気がひしひしと感じられてとても好きです。


自分たちの未来を守るために歴史改変を阻止する!
そんな本筋もそれはそれで楽しいのだけれど、メインストーリー以外の部分が楽しくて楽しくて仕方ない。
1巻でほとんど描かれなかった23世紀の生活風景がちょこちょこ出てきて、そのたびにいちいち笑わせてもらいました。
なんとなく分かったことは、23世紀の生徒諸君はギンとさほど変わらない感性の持ち主で、クロハの方が異端者だったということですかね。
もっとも、思ったことをそのまま行動に移してしまう実行力、もしくは考えなさという点で、ギンは周りと一線を画しているような気もします。
その表出する部分の大部分が萌えへの執心であるせいで、私たちから見ると「痛い子」となってしまいがちですけれども。
自分の思いを正直に素直に、大声で吐き出すことができるというのは貴重な才能だと思います。まあ、でも、主人公としてはやっぱり残念だよね。うん。


忘れてはならないオオダイラ文体。今回は万葉集の翻訳でその本領を発揮してくれました。
凄まじい。そのひと言。このセンスには脱帽するしかない。1巻のときよりも洗練されているんじゃないでしょうか。オオダイラ文体の洗練ってなんだよ!
翻訳とはなんだったのかと一晩考えたくなってくるようなその内容ももちろんですが、にくいのはついつい口ずさみたくなってくるようなテンポの良さ。
こんなの見ちゃったら暗唱したくなってくるじゃないですか! いかん、自重しろ自重!
ああお腹痛い。しかし、この歌を作った人は、千年以上後に自分の歌がこんなネタにされてしまったことを知ったら一体何を思うのでしょうか……。


1巻に続き、数組の兄と妹の関係が描かれましたが、やはりクロハは圧倒的に可愛いなあ。
どうしてこんな兄がいいのかとずっと不思議に思って来ましたけど、ふたりの過去も少し明らかにされて、なんとなく分かったような、まだまだ分からないような。
駄目駄目に見える兄にも、妹にしか分からないいいところがいっぱいあるってことなんでしょう。それでも駄目なことに変わりはないんですけど。
あ、酔ったクロハにはニヤニヤさせられまくったのでまたよろしくお願いします!


唐突でご都合的な展開とか、いきなり出てくる新キャラとか、不思議チョイスの伏線とか、突っ込みたいところはたくさんあるけれど、色々ひっくるめてもやっぱり楽しかったですね。
事件は一段落したようで、まだ解決されていない謎もそこここに残されていて、挙げ句の果てが最後のこれ。
もう、こういうことを平然とやってくるからやめられない。次の巻が待ち遠しいですね。


あの「ん」はいるのかいらないのか。これは文学的に大変重要な命題ですよ、ええ……。