まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

GOSICKsⅢ―ゴシックエス・秋の花の思い出―

  • ストーリー

冒険を終え、学園に帰ってきたヴィクトリカと九城。
ところが旅での無理のせいか、ヴィクトリカは熱を出して家にこもりきりになってしまう。
暇をもてあます彼女のため、おもしろい話を求めて、九城は図書館塔へと走るのだった……。


出逢いの春、2人きりの夏を経て、秋の2人を描いた短編集第3弾。
熱を出してしまったヴィクトリカのために、九城は毎日いそいそと、お話と花を持って、ドールハウスへ会いに行きます。
相変わらず忠実な下僕、いえ、献身的な友人ですねえ、九城は。
ほんと、ヴィクトリカのことが大好きなんだなあということを改めて感じます。
ちょっとした隙を見てはヴィクトリカのほっぺやつむじを触りまくってるし。こればかりは九城の特権ですもんね。羨ましい。


九城が持ってくるお話は、別に事件記録でも、怪談でも、推理小説でもなく、はるか昔の人々の、花にまつわる人生を記録した読み物です。
にも関わらず、お話の裏に隠された謎を見つけては解き明かしていってしまうヴィクトリカは、やはりただ者ではありません。
もうちょっと素直に物語を楽しめばいいのにと苦笑してしまいますけれど、彼女くらいになると、ただ物語を聞くだけでは物足りないのかもしれませんね。
もちろん、花に関係するお話を、あの広大な図書館からいちいち見つけてくる九城だって大したものです。これも一種の才能なのでは?


第二話「永遠」は、紫のチューリップにまつわる、オランダのお話。
普通の恋物語として読んでいたのに、ヴィクトリカが明かした思わぬ秘密に思わずニヤリとさせられました。あの切ない気持ちを返してほしい。
第四話「思い出」は、黄色いエーデルワイスにまつわる、アメリカのお話。
口のきけない少女と花売りの少年の運命めいた恋に、胸が熱くなります。
九城にとっての「一輪の花」はもちろん、目の前の、小さな金色に輝く妖精さんなんでしょうね。


書き下ろしの第五話「花びらと梟」は、アブリルが主人公のお話です。
アブリルはなんというか、今回も可哀想な立ち位置。めげずに頑張ってもらいたいものですけれど。
ヴィクトリカを除けば庭師とセシル先生と九城くらいしか行き来できないらしい迷路花壇の性能には驚くしかありません。
よっぽど広大な迷路なのかな。灰色狼の不思議な力……は、まあ、はたらいていないと思いますが。
まさかのキャラが登場してきてびっくりしました。思わせぶりな発言も飛び出して、続きが大いに気になるところです。
嬉しいことに新刊が近々出るということで、楽しみに待ちたいと思います。


イラストの素晴らしさに今回も完敗しました。
にんじんをかじるヴィクトリカ、両手をさしだしてねだっているヴィクトリカ。ああ、可愛すぎてもうだめだ。