まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

『処刑少女の生きる道5 ―約束の地―』感想

処刑少女の生きる道(バージンロード)5 ―約束の地― (GA文庫)

ストーリー
「私は清くもないし、強くもないし、正しくもない。そんな悪い奴だもの」
アカリを連れ去った導師「陽炎」を追い、“聖地”に足を踏み入れたメノウ。せめて自分の手でアカリを殺す。そう決意した彼女の目的は、【白】の遺物・塩の剣の確保だった。幼き日のメノウと導師がかつて辿った旅路の果て。塩の剣が眠る、清浄なる塩の大地。第一身分に封印されたそこへ至るには、【使徒】魔法使いが守護する聖地の中枢・大聖堂の突破が絶対条件。「陽炎」によるアカリ処刑のタイムリミットが迫るなか、圧倒的戦力差を覆すためにメノウが選択した禁忌の手段とは――。師を超える時は、今。彼女が彼女を殺すための物語、決別の第5巻!!

聖地を舞台に繰り広げられるアカリ奪還作戦!
ここにきてもなお迷いの消えないメノウが、仲間たちだけではなく導師やかつての敵との関わりの中で答えを見出していく展開が熱い。
目的のためなら手段を選ばずに魔の手を借りることすら厭わない吹っ切れたメノウがめちゃくちゃ頼りになるし格好良かったです。


人災になる前にアカリを殺す。そのために追いかけると約束してやってきたはずなのに、導師と再び対峙したことでまたも自らの迷いに直面するメノウ。
固く閉ざされた聖地に潜入するため、モモのみならず盟主に協力してもらったりマノンを利用したりと敵だったはずの人々の力を借りることには迷いがなくなった様子だけれど、それでも一番大事なところでナイフを止めてしまいます。その姿は少し意外でもあり、やっぱりそういう子なんだなという嬉しさもありました。
ただメノウにとっては自分のアイデンティティが崩れる事態であることには変わりなく。ボロボロになった彼女がほうほうの体で逃げ出した先で出くわしたのは、またしてもかつて戦った相手。でもこの出会いがきっかけでメノウがまた立ち上がることになるのだから分からないものです。というかこの作品、敵だとか味方だとか、そんな簡単な関係で語れるような登場人物が本当にいないよな。戦ったからといって憎んでばかりというわけでもなく、大切に思っているから戦わないわけでもなく。キャラ同士の複雑な関係性がこの作品の一番の魅力だと思います。


迷っていたのはメノウだけではなく、アカリも同じでした。お互いに相手に願っていることが違って、だからまた会う必要があって。そのためにメノウが画策した手段ときたら、めっちゃテロリストで唖然としつつも笑っちゃいました。やってくれますわメノウさん……万魔殿の襲撃から間を置かずにこれとか、エルカミ大司教にちょっとだけ同情しちゃうな……(笑)。
メノウとアカリだけに許された互いへの理解。繰り返しの関係上、どうしてもアカリからの一方的な愛情になりがちだった二人が、やっと真の意味で友人になれた気がして嬉しかったですね。
ただ、二人の未来のために乗り越えるべき壁はまだ残されています。あまりにも美しい……そう、ラスボス戦にふさわしい最後の舞台で、どんな決着が待ち受けているのか。次巻も早く読まねば!


作中トップクラスの巻き込まれ系女子フーズワースさんには心安らかに生きてほしい。