まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

『探偵くんと鋭い山田さん 俺を挟んで両隣の双子姉妹が勝手に推理してくる』感想

探偵くんと鋭い山田さん 俺を挟んで両隣の双子姉妹が勝手に推理してくる (MF文庫J)

ストーリー
入学早々、俺は失敗した。親の仕事が探偵だと口走ってしまったせいで、クラスメートから相談が持ち込まれるようになったのだ。絶版した推理小説の犯人当て、美術部で振るわれたナイフの謎、面倒なことになったと頭を抱える俺に――
「それさ、そもそも事件じゃないね~」
「多面的な考え方も取り入れたらどう? 戸村くん」
山田姉妹は平常運転、鋭い推理でスパッと解決していく。最初は気に食わなかったけど、本気で推理する彼女たちは今では尊敬対象だ。……が、話すときの距離、近すぎない!? 熱くなるのは分かるけどたまに狙ってるよね!? 山田さんたちと少し甘い、本格派学園ミステリーラブコメ

ヒロイン、謎、そしてヒロイン
待ちに待った玩具堂先生の学園ミステリーラブコメだあああああ! ……とか言いつつ、2巻が出てから1巻を読むスタイル。いや、期待度が高まりすぎて逆にしばらく読めていなかったのですが、いざ読んでみたらやっぱり面白かったです!!
真逆の性格を持つ双子のヒロインに翻弄されながらいくつかの謎を解決に導くうちに、少しずつ関係性が動いてゆく……この微妙な空気感の演出がね、さすがですね。
謎解きも、作者いうところの「ミステリ(もどき)」としては十二分に楽しかったです。第二話が出色。


アホの子で自堕落だけれど天才肌の姉・雨恵。落ち着きがあって知識豊富な優等生の妹・雪音。性格がまるで異なる双子の山田姉妹に挟まれてしまった主人公の戸村。
巻き込まれ体質の戸村に依頼が舞い込んで、それをひらめきの天才・雨恵が解きあかすのが第一話。……では雪音は? というところに、今作の面白みがあります。
雪音は、豊富な知識で推理の役に立ったりはするのだけど、あまり「名探偵」っぽくはない。かといって戸村のように「助手」っぽくも見えないのです。第一話の段階では、雪音の立ち位置が分からない。
そんな状況から、時に近づいたり、時にぶつかったりを乗り越えて、最終的には雪音と、戸村自身もひっくるめて、3人揃って「探偵」だというところになんとなくお話を落ち着かせてみせるのだから、やっぱり上手い。関係性を描きだすのが本当に上手いよなあ。


ヒロインとしては、雨恵と雪音は双子だけあってなかなか甲乙つけがたいですね!
雨恵にだる絡みされたりからかわれたりするのは楽しいし、真面目な雪音らしい不器用な距離の縮め方にはドキッとするし、かと思いきやそれを察知した雨恵が妙に機嫌悪くなったりするのも可愛らしくて、あれマジで決められないですねこれ。
雪音はともかく、雨恵の方は今のところ雪音へのシスコン的な部分の方が大きいのかな。でも雨恵は分かりやすそうに見えて一番謎だから、その心境は彼女のみぞ知るというところですね……。
現状ではちゃんとヒロインしているように見える雪音の方を推したいんですが、ちょっとしたことで変わりそうな気もします。謎解きはもとより、そっち方面の展開も楽しみです。


イラストは悠理なゆたさん。雨恵も雪音も非常に可愛らしく描かれていて眼福でした。
諸君には申し訳ないが雪音は眼鏡を外した方が可愛い! と思う!


雪見ミステリー文庫……ウッ頭が……。