『天才王子の赤字国家再生術 ～そうだ、売国しよう～』感想

ストーリー
「さすが殿下！これが狙いとは！」「どこまでもついて参ります！」
『（一体どうしてこうなった!?）』
資源も人材も兵力もない弱小国家を背負うことになった若き王子ウェイン。文武に秀で、臣下からの信頼も厚い彼にはひそかな願いがあった。
「国売ってトンズラしてえええ！」
そう、王子の本性は悠々自適の隠居生活を目論む売国奴だったのだ！　だが、大国に媚びを売ろうと外交すれば予期せず一方的に利益を手にし隣国との戦争で程よく勝とうとすれば大勝利。名声は上がるが売国は遠のき、臣民はイケイケ状態で退くに退けない!?　天才王子による予想外だらけの弱小国家運営譚、開幕！

ニコ生配信でオススメしていただいたので読みました。小国の王子が自分の思惑を超えた大成功を国にもたらしていく国家運営ファンタジー。
評判に違わぬ面白さでした！　弱小国家運営ものというだけでもワクワクするんですが、予定を超えた大勝利が続いてしまい慌てふためく主人公というのが新鮮で楽しかったです。
王子である主人公と補佐官の少女の固い絆もグッとくるところがあって良いですね。


大陸の隅にある弱小王国の摂政になってしまった王子ウェイン。国家運営が面倒くさすぎてすぐに国を売っぱらってしまいたくなるようなダメ人間なのだけど表向きは文武に秀でた天才王子。
補佐官のニニムの助けを得ながら大国との折衝をしたり避けられない戦争を迎え撃ったりしていくのだけど、基本的に彼の狙いは「損をせずほどほどに勝つ」こと。大勝利をするとそれだけ他の国に狙われやすくなってしまうから……と言いつつ、事態は思わぬ方向へ転がっていきなぜかいつも大勝利してしまうのだ！
人も金も資源もない国での国家運営。東から迫る帝国と、西からやってくる戦争の危機。八方塞がりに見える状況を一体どのように打開していくのか、1巻からアクロバティックな内政と外交が目白押しでとても楽しいですね。
ウェインは天才なのは間違いないんだけれども、そんな彼の狙いを超えて作戦が大成功してしまって、結果本人は大慌て、という鉄板の流れが出来上がっているのが愉快。策を立てた本人にすら先の読めない展開だからこそストーリーの流れも予想外で読んでいて飽きが来ません。


表向きは有能で慈悲深き名君、裏では弱音ばかりのダメ人間、という二面性を持つ主人公ウェインが魅力的ですね。まだ年若き王子であるがゆえに国内の味方も少ないのだけれど、数少ない直属の部下のことは心から信頼し部下もその期待に応える、そんな部下との関係性がいい。
そしてその部下の筆頭がヒロインのニニム。ウェインの側近であり補佐官であり無二の友人でありツッコミ役であり、王子の裏の顔を知る人間でもある彼女。
ウェインとニニムが二人きりでいるときの気の置けない雰囲気にはほっこり。すぐにダメ人間モードになってしまうウェインをたしなめる役割でありつつも、実は誰よりウェインのことを想っているニニムの可愛らしさにニヤニヤしてしまいます。
一方ウェインの方も、他国では被差別民であるニニムのことを「俺の心臓」と呼んで溺愛しており、もし他者が彼女のことを貶めようものなら否応なしに首が飛ぶほど。普段へらへらしているように見えるだけに本気で怒るとめっちゃ怖いな王子……。キレると何やらかすか分からないタイプの人だな……。
そんな固い絆で結ばれた二人が、今後どのように乱世の荒波を漕いでいくのか楽しみ。今4巻まで出ているので続きも早めに読みたいですね。


イラストはファルまろさん。ウェインの顔芸がおもろいですね。
一番真面目な顔がおっぱいに相対している時なのはアレだけど……（わかる）。


フラーニャが理想的な「守りたい妹」すぎる。