まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

『キミの忘れかたを教えて』感想

キミの忘れかたを教えて (角川スニーカー文庫)

ストーリー
「残された余命は半年――、俺はこのまま死ぬつもりだった」大学を中退してニートとなり、生きる価値がないと感じていた松本修は、昔からの悪友・トミさんの誘いで母校の中学校を訪れる。そこには芸能人となってしまった因縁の幼馴染み・桐山鞘音がいて……。この出会いが再び修の運命を突き動かす。『天才ゆえの孤独を抱えたヒロイン、凡才ゆえに苦悩する主人公。二人のすれ違いと、遠回りな青春に引き込まれました』『逃げて逃げて、逃げ続けたクズに残った一つの約束。胸が熱くなりました』発売前から感動の声多数。掴めなかったチャンス、一度何かを諦めてしまった人に贈る、大人の青春物語。

夢から逃げて生きる意味をなくしかけた青年が、かつて大切な約束を交わした幼馴染みと再会し、彼女とともにまた歩きだすまでを描く青春ストーリー。
良かったです。何もかもから逃げた結果手元に何も残っていないダメダメな主人公が、周囲の温かい大人たちの後押しをもらって最後のひと足掻きを見せる。胸を高ぶらせる熱量のある物語だったと思います。
自分がかつて裏切り、遠くに行ってしまった幼馴染みヒロインとの、数年越しの青春のやり直し。やだ、きゅんきゅんしちゃう!


大学を中退して地元でニートになり、身体を侵す病魔まで見つかってしまい、生きる目的を見失ってしまった二十歳の青年・修。そんな彼はある日、かつて一緒に歩いていこうと約束し、一方的に裏切ってしまった幼馴染み・鞘音と再会する……。
うーん、重い! いきなり重い! いきなり主人公に病気が見つかって、手術をしなければ余命半年とか言われていて、正直ちょっと好きじゃない感じの出だし。いや、闘病ものホントに苦手なんですわ……。
しかしそこからのお話の展開は意外と暗い雰囲気というわけでもなくて、修はただでさえ鬱屈した性格をしているので、ともするとそういう方向に行ってしまいそうなところ、母や、年上の友人・トミさんや、その奥さんであるエミ姉といった周囲の人たちの奔放さ、明るさでもって、上手くバランスを取っている。
周囲がみんな知り合いという気安さ。誰もが理由なく味方になってくれるという安心感。田舎ならではの温かみが丁寧に描かれていますね。


人気女子大生歌手・SAYANEは、しかし修にとっては高校時代までいつも一緒だった幼馴染みの鞘音であり、またかつて自分が一方的に裏切った相手でもある。
当然再会直後はギクシャクするし、鞘音からの視線も冷たいのだけれど、トミさんに強引に連れ回されるうち、自然にあの頃の関係性へと戻っていっちゃう。鞘音も心の中では修のことを大切に想い続けていて、それは修も同じで。幼馴染みってなんて素敵なんだろう。
修が鞘音の下から離れたのは、自分の才能が彼女の才能に遠く及ばないことに気づいてしまったから。当の鞘音の方は、才能の差なんてどうでもよくて、ただ修と一緒に音楽がやりたかっただけなのに。
こうして書いていると、ああ、本当になんてアホだったんだ修はぁぁぁー! 思春期のバカヤロー! とも思ってしまいます。でも、一度大きくすれ違ってしまった二人だけれど、またやりなおせるんだ。いつだって、素直な気持ちをぶつけることができたら、きっと。青春をもう一度。
正直、この先のお話を読むのは少し怖いのですが……。二人の物語をきちんと見届けたいという思いもあるので、続刊があるなら手に取りたいですね。


イラストはフライさん。もはや青春ラノベの代名詞的存在になりつつありますね!
各章を読んだあとに章扉イラストを見ると、沁みます。


エミ姉ちょっとずるいくらいえっちじゃない??