まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

『西野 ~学内カースト最下位にして異能世界最強の少年~』感想

ストーリー
学園カーストの中間層、冴えない顔の高校生・西野五郷は、界隈随一の異能力者だ。ダンディズムを愛する彼の毎日は、異能力を使ったお仕事一筋。常日頃から孤独な生き様を良しとしてきた。シニカルなオレ格好いいと信じてきた。だが、その日々も永遠ではない。高校二年の秋、童貞は文化祭を通じて青春の尊さに気付く。異性交遊の大切さを知る。これはそんな西野少年が、過去の淡白な人生から心機一転、日々の生活態度を改めると共に、素敵な彼女を作って高校生活を謳歌する為、あの手この手を用いて学園カーストを駆け上がらんと奮闘するも、一向に登れそうにない、なんちゃってハードボイルド物語(異能バトル付き)

並外れた異能の力を持つために裏世界では名の売れた最強、でも表の世界ではぼっちで童貞でフツメンで学内カースト最下位、そんなちぐはぐな二つの顔を持つ主人公がリア充目指して頑張ろうとするんだけれども全力で空回っていく青春未満学園カーストストーリー~異能バトルを添えて~。
こ、これは……確かに読む人は選びそうですが、面白かったです。裏では誰もが慄く凄腕エージェントなのに、ひとたび学校に行けば上位カースト勢から圧倒的弱者として扱われてしまうフツメンの悲哀……せつねえ、せつねえよ。


異能者【ノーマル】として裏の世界で活躍する少年・西野。しかし彼は、学校では空気のように扱われる存在だった……なぜならフツメンのコミュ障のぼっちだから!
もともとそれでやってきたのだから、そのままでいれば良かったものを、文化祭の準備をきっかけに青春をしてみたいとか思い立ってしまったからさあ大変。悪い意味で空気が読めない、喋り方も変にカッコつけていて気持ち悪い、そして圧倒的フツメン、そんな彼がカーストをさらに転げ落ちていくのに時間はかからないのだった……。
なんといっても西野の不思議なキャラクター性が魅力的でしたね。マフィアの顔役暗殺のようなとんでもない仕事を片手間にやってのけるのに、クラスの皆は誰もそのことを知らないから、彼のことをモブのようにしか見ていない。つくづく学校って特殊な環境なんだなって思います。
挙句の果てにはいじめのような段階にまで突入するのだけれど、本人はそれを全く苦にしていないのがまた愉快。このぼっちのメンタル半端ないぞ。一瞬格好いいとすら思ってしまった。カースト最下位というよりも、カーストの外にはみ出してんな……。


そんな西野の裏の顔を知り、また命を救われた結果、学園で彼に絡んでくる数少ない存在がヒロインの金髪美少女・ローズ。
カースト最上位の彼女が西野に話しかけることで上位陣がざわつく流れは一種の様式美ですね。ローズの方もカーストとかそういうのを全然気にしないタイプだから、他の女子たちにはイケメンと言われチヤホヤされている男子どもが存分に振り回される姿には、薄暗い快感が湧き上がってきます。
しかし西野に興味津々のローズは、一方で西野の方からは見向きもされないというんだから、上手くいかないもんですね。適当吹いた竹内のやろう絶対許さんからな。
クラスでも一番のイケメン・竹内、そしてそんな竹内を狙うクラスの委員長・志水などなど、カーストを構築するクラスの面々はハッキリ言ってロクな人間がいなくって、いやこんな奴らの中で青春しなくてもよくない!? という感じなのだけれど……。上位カースト陣を徹底的に叩きのめすような痛快な展開は、いつかやってくるんでしょうか。
さて、1巻のラストには笑ってしまいました。これで続くのかよ! どう見ても話の落ちがついていなくてモヤモヤするので、即行で2巻を読もうと思います。


イラストはまたのんき▼さん。西野のなんとも言えないフツメンぶりが最高です(笑)。
もちろんローズちゃんはめっちゃ可愛い! 志水と松浦も顔だけは可愛い。


巻末の解説に平坂読をチョイスした編集、ナイスと言わざるをえない。