まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

『好きって言えない彼女じゃダメですか? 帆影さんはライトノベルを合理的に読みすぎる』感想

ストーリー
「恋人同士、ですか? よく解りませんが、それでよければ」
僕の彼女、帆影歩は少し変わっている。無口で無表情が基本な上に「人=哺乳類=おっぱい大好き」と、平然とトンデモ理論を語ってくる。さらに僕の足の甲を愛撫してきたり、入浴中の裸の画像を送ってきたり――って帆影? 当初は清純派文学少女だったよね!? おかげでなぜか妹の映が心配?してきて、言葉責めに合うようになったのですが!?(妹よ、お前は何なんだ)
そんな帆影も“普通彼女”を目指してはいるらしく、参考にしているのは……ら、ラノベらしい?(なんか期待しちゃう)
彼女と妹と僕。ラノベを通じた不思議な三角ラブコメ開幕!!

やったー玩具堂先生の新作だー! 少し不思議ちゃんな彼女とともに、ライトノベルとは、萌えとはなんぞや、を紐解いていくほんわか青春ストーリー。
ライトノベルを題材にして唐突に語りだすミステリアスなヒロイン・帆影が奇妙な魅力を放つ1作でした。可愛いのう。


一応お付き合いしているはずなのだけれど、傍目には全く彼氏彼女らしくない主人公・天太と帆影。そして兄のようなオタクを嫌いながらも実はブラコン全開な妹の映。
わけあってライトノベルのことを学ぼうとする映のため、天太と帆影がライトノベルのことをともに教えていくというのが今作のお話の流れ。
さて、ライトノベルの表紙で胸が強調されているのはなぜか、という命題が提示されて、「人間だって哺乳類なのだから自然におっぱいを求めるもの」というところまでなら、どこかしらで聞いたことがあるような内容だと思います。
しかし帆影さんはそんなところでは到底留まりません。「ホモ・サピエンス」や「ホモ・ファーベル」といったヒトの定義から話を展開し、人体の構造や生理を踏まえ、なぜ人類がおっぱいに惹かれてしまうのかという理論を数ページに渡り切々と語り上げた結果、織田信長はスゲェという結論にたどり着く、そんな異次元の理論展開を見せてくれるのです。どうですか、意味がわからないでしょう!
そんな彼女は主人公から見ても、その妹から見ても、――そしてほとんどの場面では読者から見ても――、わけがわからない女の子なのだけれど、その意味不明さにどうしても惹かれてしまう主人公の気持ちは、正直めっちゃわかる、わかってしまうのです。


主人公のことを好きなんだか好きじゃないんだかわからない、でも一応付き合っているらしい彼女。
ライトノベルにまつわるアレコレとはまた別に、謎めいた彼女の真意を探していくラブコメディとしても楽しい。というか、そっちがむしろメインなのでしょうけど。
無表情で無口で無防備、でも時々妙に饒舌だったり積極的だったりする。そんな付き合いたての彼女に思う存分振り回されるのがいい。
わからないからこそ、もっと知りたくなる。少しでも知ることができたら、嬉しくなる。恋愛って、そういうことやん……?
ずっとその真意がわからなかっただけに、最後のエピローグにはやられました。いやラストになってこんなんずるいでしょー! 好きになるでしょー! ごちそうさまデース!
この魅力的すぎるヒロインをもっともっと見ていたいし、妹ちゃんとの胃が痛くなる感じのバチバチももっとやってほしいので、ぜひ続刊希望です! お願いします!


イラストはイセ川ヤスタカさん。帆影のキャラデザがほんと素晴らしいです。
顔も体つきも表情もいいのだ。たまらんのう。


まさかこんな形で『子ひつじは迷わない』を登場させてくるとは……(笑)。