まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

『86―エイティシックス―Ep.4 ―アンダー・プレッシャー―』感想

ストーリー
ついに運命の再会を果たしたシンとレーナ。どことなくいい雰囲気を醸し出す二人に、フレデリカとクレナは戦慄し、そして気を揉むライデンらの苦労は留まることを知らない。
しかしそんな束の間の休息を破り、レーナを作戦司令とする新部隊に初任務が下った。 共和国85区内北部、旧地下鉄ターミナル。地下深くに築かれたレギオンの拠点が、その口をあけて彼らを待つ。そこに見えるのは闇。レギオンの、共和国の、そして彼の国が虐げた者たちの、闇。シンとレーナ、二人の共闘を描く『Ep.4』登場! “地の底からの呼び声が、彼らに新たな試練を告げる。”

発売前より作者が「ライト回」と声高々に宣言していた今巻……で、し、た、が、これのどこがライト回だったのか僕にはサッパリわからないよ……(笑)。
まあね、確かにシンとレーナが再会して、ちょっとした? ニヤニヤできる瞬間が? あったかもしれませんけどね???
これだけ大々的に戦闘をやっておいて、よくもまあライト回とか言えたもんですわ! てっきり日常コメディ短編集かと思ってたのに! この作者やっぱりドSなのか! 知ってた!


運命的な再会を果たしたシンとレーナ。や、ザ・朴念仁のシンにしては、精一杯ラブコメしてたんじゃないですかね。レーナも、そっちの方面に関してはまるで無頓着ですから、なかなか進展はしそうにないですけどね。むしろふたりの距離感に対して周囲が気を遣っていたりクレナやフレデリカが焦ったりしているのがラブコメらしくて面白かったです。
それから、アネットとシンにまつわるエピソードがよかったですね。シンに対して複雑な過去を持つアネットですが、そんな過去に囚われてばかりでなく、精一杯今を生きてほしいと思いました。


レーナが総指揮官となり、その下でシンたちやかつての部下たちが一堂に会する独立機動部隊。
遂に我らが女王の下で彼らが戦う時がやってきたのだと思うと興奮するけれど、そんな悠長なことばかりも言っていられない。結局のところ、彼らが最前線に送り出されることに変わりはないのだから。
これまでの戦場とは異なる地下の迷宮。新たな敵と未知なる脅威。一瞬先には命の火が消えていく。ほんと誰だよこれがライト回だとか言ったのは。
倒しても倒しても奥が見通せない敵の闇。有能ではあっても指揮官としては未熟な部分のあるレーナは、決断を迷うときもある。
そんなとき、シンやシデンといった信頼の置ける部下たちが、仲間としての進言をくれる。辛く苦しい戦いの中、こういった仲間たちの絆が、一縷の光明を見せてくれているような気がします。


物理的な距離が縮まっても、根底の部分ではやはりすれ違い続けるシンとレーナ。
シンたちエイティシックスの心を本当に解きほぐすことが、いつかできるのか。そもそもそれは、彼らにとって幸せなことなのか。答えは見つからないまま、彼らはまた次の戦場へと赴く。
願わくは、シンがレーナと新たな一歩を踏み出してくれるよう。そしてライト(っぽい)回ではなく、本当のラブでコメディなライト回を見せてくれる日がきますように。


しかしシャワー中に知覚同調かけるとか、女王様もなかなかやりますな……。