まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

『ショートストーリーズ 僕とキミの15センチ』感想

ストーリー
それは、明日起こるかもしれない、あなたの「if」の物語――。「僕とキミの15センチ」をテーマに、総勢二〇名の作家が参加した珠玉のショートストーリー集。Web小説投稿サイト『カクヨム』に掲載された作品に、『バカとテストと召喚獣』の井上堅二や『“文学少女”シリーズ』の野村美月、そして『東雲侑子シリーズ』の森橋ビンゴによる「あの作品×僕とキミの15センチ」のスペシャル書き下ろしショートストーリーを加えた全二〇篇収録!

恒例のショートストーリー集。「僕とキミの15センチ」とかいうテーマ自体が既にエモくてほんとファミ通文庫最高かよって感じ(語彙力の著しい欠如)。
どれもこれもニヤニヤしたりほっこりしたりするお話ばかりで、ほうっとため息をつきつつ読んでいたのだけど、ラストの3作、これは卑怯でしょ! なんか全部もってかれたわ!
どうしようかと思ったんですが、せっかくなので全SSの一言感想を書いていこうかなと思います。長いです。


綾里けいし/『In the Room』:結果的に一番ダークなSSが最初に……五十音順自重して(笑)。短いページ数の中で謎と種明かしもきっちりあってさすが。
庵田定夏/『十五センチ一本勝負』:幼馴染と急に距離が近づいてドギマギするのめっちゃいい。こういうとき男子は絶対に女子に勝てない。
石川博品/『七月のちいさなさよなら』:時間の流れが違うのって切ないよね。なんだか元気が出る一編。
伊藤京一/『ジャンパーズ・ダイアリー』:一途な少年の孤独な頑張りにぐっときた。花の名前をちょこちょこ出してくるところにセンスを感じる。
岡本タクヤ/『地面から十五センチだけ浮いた程度の物語』:出雲さんちょれえ(笑)。でもこのちょろさがすごく好きだ。そして女王は強し。


くさなぎそうし/『華道ガールと書道ボーイのミックス展覧会』:短編小説コンテスト大賞作。書道ボーイのクズ感! 当たり前の結末ではあるんだけど、彩華の救われなさが切ないわ。こういう危険な女、ゾクゾクします。
久遠侑/『変わりゆく景色と変わらない約束』:夏に会う約束といい、顔だけ見て帰る女の子といい、いつの間にかできた15センチといい、なんだか全てがいい。ほのかな甘さときゅんとする切なさのバランス感はさすが青春の名手。
九曜/『Xp;15cm』:ただしいとしょかんのつかいかた。明らかにちゃんと誘われてるのに社交辞令と思っちゃうのわかる。
佐々原史緒/『甘やかなトロフィー』:菓子屋の息子と幅跳び女子の不可思議な関係。出会い、挫折し、また前を向く、このページ数に詰め込んだドラマよ。上手いなあ。
更伊俊介/『十五夜さんは十五センチほどズレている。』:まーた、こういうことをやってくるんだから! 誰か1人くらいはこういう好き放題する人がいないとね。


三田千恵/『たった一人のお客さん』:最高以外の言葉がないぜ、おい。300ページ読みたかった。しかしこれは直が罪深すぎるぞ、まったくもう。
田口仙年堂/『ポケットの中の女神』:至極単純な構成なんだけどニヤニヤさせてくれるなー!
竹岡葉月/『金曜日は恵比寿屋に行く』:短いのに登場人物それぞれに味わいがある。「人」を描くのが上手いんですわ。
羽根川牧人/『アイスキャンディーと、時を重ねる箱』:時を越えた出会いは王道の切なさ。タイムパラドックスに突っ込むのは無粋というもの(笑)。
御影瑛路/『無事女子にフラれる、夏』:美少女がグイグイきて、勘違いして、盛大にフラれるオタク。いっそ清々しくていいわ。青春の輝きだわ。


水城水城/『思春期ギャルと「小さい」オジサン』:これが話題のパパ活か(違う)。オジサンって意外と女子の心に入り込むのが上手いよね。
築地俊彦/『隣の○○○さん』:謎の隣人、気の置けない同級生ヒロイン、タイムトラベル。好きな要素盛り盛りなだけにもっと長いページ数で読みたかったなー。
森橋ビンゴ/『彼女は絵本を書きはじめる』:「あの子」が絵本を書こうと思った理由とは。いやー嬉しすぎる後日談でした。おめでとう。
井上堅二/『僕とキミらと15センチにまつわる話』:人物名が伏せられていても余裕で脳内補完で読めるしっていうかやっぱりくっそ面白いし大好きだし、漫画原作もいいけどラノベも書いてくださいお願いします。
野村美月/『“文学少女”後日譚 つれない編集者に捧げるスペシャリテ:野村先生の小説が読めるというだけで嬉しいのに、今になって『文学少女』の新作短編が読めるなんて思わなかったし、それがまさか心葉と遠子先輩が恋人同士になるときのエピソードだなんて、もはや幸せすぎて何を言ったらいいのか。完結からしばらく経ったけれど、遠子先輩は変わらずとても素敵でした。ただひたすらに感謝。ありがとう。大好きです。