まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

Babel ―異世界禁呪と緑の少女―

ストーリー
気づくと異世界の砂漠に立ち尽くしていた女子大生・水瀬雫。
行き倒れてしまった彼女は、幸運にも近くの街の住人に拾われて一命をとりとめる。
その街で雫は、魔法文字を研究する魔法士の青年・エリクと出会い……。



異世界に飛ばされた女子大生が魔法士の青年とともに旅をしながら地球に戻る方法を探すファンタジー。
派手さはないのだけれど丁寧な描写で自然に引きこまれるお話でした。
自分に自信がないわりに、思い立ったら周囲が驚くような行動に出てしまう主人公の女の子が不思議と魅力的ですね。


優秀な姉と妹を持った平凡な次女で、自分に自信が持てずにいる女子大生・雫。
ある日彼女が道端に落ちていた本を拾うと、異世界の砂漠に飛ばされてしまっていたのです!
なぜか言葉が通じる、魔法の存在する世界。そんな世界で出会い、彼女に興味を持った魔法士の青年・エリクとともに、元の世界に帰るための方法を探す二人旅を始めるのでした……。
主人公が女子大生の異世界ファンタジーというのは、なかなか新鮮に感じます。
異世界にやってきたことで戦う力がついたわけでもなく、魔法を使えるようになったわけでもなく、かといって元々特別な技能を持っているわけでもなく、生来の生真面目さで地道に働くことで街の人々の信頼を得て、元の世界の言語をエリクに教える見返りとしてエリクの助けを得る雫。
まあ、身ひとつでいきなり放り出されたにしては相当幸運続きだったことに間違いはないけれど、異世界での生活の始め方は実に地に足がついていて、地味でもありつつ安心感がありました。


出会ったばかりのお年頃の女と男が二人旅。字面だけ見ると、いやいや正気か、とも思いますが、エリクは不思議とそんな風に感じさせない雰囲気を持った男ですね。だからこそ雫も彼を信頼したのでしょうけど。
旅の中で、魔法に関する厄介な事件に巻き込まれる雫とエリク。どうやら優秀な魔法士らしいエリクが事件解決のために動くのはわかるのだけれど、ごく平凡な一般人の雫が、危険だから離れていてと言われたにも関わらず意外な積極性を発揮してひょいひょい首を突っ込んでいくので、読者としては気が気じゃありません。
自分じゃ何もできないということがわかった上でやっているんだからたちが悪いですね! でもそんな行動力も大切な人が危険な目にあっているからこそのものですし、人一倍情が深い女の子なのかもしれません。雫本人は自分に自信がないとか言っているけれど、かなり人に好かれる気質ではありますよね。
事件の中で出会った不思議な少女・メア。時折雫の頭に入り込んでくる謎の記憶。今後待ち受けているという異世界の「変革」。
いくつも気になることがありつつ、まだ物語は始まったばかり。雫たちの旅路がどこに向かい、どんな結末を迎えるのか……。ぜひ最後まで描ききってもらいたいですね。


イラストは森沢晴行さん。落ち着いた絵柄と色合いが実に今作に合っていますね。
メアと雫のイチャイチャイラストが見たいです!


正直雫の妹ちゃんが気になる。