まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

メロディ・リリック・アイドル・マジック

ストーリー
国民的アイドルグループ・LEDに叛旗をひるがえした女子高生アイドルたちがしのぎを削る街・東京都沖津区。
高校入学に合わせて学生寮に入った吉貞摩真はそこが沖津区アイドルたちの根拠地であることを知る。
しかし彼にはアイドルを好きになれない理由があって……。



国民的アイドルをクソと言い放つパンクでキレキレのアイドルたちが住む街で、少女たちがアイドルグループを結成する青春アイドルストーリー。
石川博品×アイドルモノというだけでワクワクしてきちゃうわけですが、期待に違わず非常にエネルギッシュでパワフルなお話でした。
少年と少女が運命的に出会い、奇跡のきらめきを放ちはじめる。女の子が「アイドル」になる瞬間がここにある。


国民的アイドルグループ・LEDを蛇蝎の如く嫌うご当地女子高生アイドルたちが住まう街。
とある理由から音楽を遠ざけてきた少年・ナズマと、アイドルから逃げてきた少女・下火は、そんなアイドルたちが集う学生寮で出会います。
学年一の美少女・アーシャに誘われて、なし崩しにアイドルグループを結成する下火。そんな下火の姿を見て、ナズマは初めて「アイドル」のファンになるのでした……。
ヒロイン・下火はかなりユニークな女の子ですね。表向きは、いつもパーカーでチョコレートジャンキーなこと以外は、普通の物静かな女の子という印象なんですが、地の文が彼女の視点になると一変。実は心の中ではえらく饒舌な彼女、口には「うん」とか「へえ」としか言っていないのに心の声ではその十倍くらい喋っていたりして、誰にも聞こえないそのツッコミが妙に心地よく響いてくるのです。
一方のナズマは、音楽を聞くと目の前に謎の「幻」が見えてしまう男の子です。自分だけしか見えないそれが見えるのが嫌で、音楽を避けてきた彼。でも下火の歌声だけは、その幻が生まれて初めてうつくしく見えた……。アイドルとマネージャーの奇跡の出会いです。こんなの、ドキドキしちゃうに決まってる。


下火とアーシャで結成したアイドルグループ・メロリリ。プロデューサーはひとつ先輩の国速、そしてマネージャーはナズマ。
スタッフは全員身内の上、最初のライブはアーシャの妹の誕生日パーティという、本当に駆け出しも駆け出しのアイドル。
それでも、メロリリは間違いなくアイドルです。アイドルとして歌う女の子たちがいて、ナズマやアーシャの妹というファンがいるのですから。「やらなきゃアイドルじゃないし、やってしまえばアイドルだ」とは作中の一文ですが、とてもいいですね。名文句だと思います。
実はメロリリになる前から、アイドルとは深い因縁のあった下火。彼女が過去を乗り越えるのか否か、そして元々の夢とここでの夢とどちらを追いかけるのか。分岐点はいつも自分が今いるところです。
デビューしたてで、経験も喜びも失敗も何もかもがこれからのアイドル・メロリリ。願わくは、彼女たちの戦いをこれからも見守りたいものですね。期待してもいいかな?


イラストはPOOさん。実に求心力の高い見事な表紙! これは目を惹きますわ。
カラーもいいんですけど、モノクロイラストが特に可愛くて最高でした。


劇団一角獣の『運命』ごっことか最高かよ(ボクもやりたいです)。