まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

りゅうおうのおしごと!3

ストーリー
宿敵《両刀使い》に三度敗れてしまった八一。
八一はあいと共に、更なる進化を目指して《捌きの巨匠》に教えを乞う。
一方、八一の憧れの女性・桂香は、研修会で降級の危機にあった……。



振り飛車を学び始めたあいと、研修会の年齢制限が差し迫る桂香、ふたりの同門対決が描かれる第3弾。
八一、銀子、あいといった煌めく才能たちを近くで見続けてきた心優しき凡人の、勝負への気迫に胸が震えます。
また、そんな桂香を相手に心揺れながら、本気を出すあいの姿も……熱い。激烈に熱い巻でした。


居飛車振り飛車の両方を指しこなすオールラウンダー棋士《両刀使い》こと山刀伐尽八段に三連敗をくらってしまった八一。
八一もオールラウンダーを目指そうと、《捌きの巨匠》こと振り飛車の大家・生石充玉将振り飛車を教えてもらうことにするのです……おまけにあいちゃんも!
しかしプロ棋士でオールラウンダーになるというのは至難の道。山刀伐八段も、鬼のような努力を重ねて今の実力を身に付けた。
居飛車で戦うときとは全く異なる「捌き」の感覚に四苦八苦する八一とあい……ですが、やはりこのふたりは別格なのでした。
忘れがちですけど、あいちゃんだけじゃなくて八一も天才だったんですよね。学び始めたばかりの振り飛車を、たどたどしくも使いこなしてみせる「将棋」の才能。あの姉弟子・銀子ですら唇を噛んで羨ましがる、「将棋星人」たちの才能……。
天才たちが卵の殻を破り、羽ばたいていく姿を見るのは、清々しくていいものです。特にあいちゃんは、やっぱり凄まじいね!


そんな天才どもの頑張りの一方、彼らに比べれば凡人である桂香も、銀子から将棋の特訓を受けていました。
いよいよ研修会の年齢制限が近づいてきて、この1年に自分の将棋人生が懸かっているという切羽詰まった状況。
いつも穏やかな普段とはかけ離れた、勝利に貪欲な桂香の姿。遥か年下の天衣や、そしてあいに対して、盤外戦術まで使いながら「勝ち」にこだわる大人げないオトナのお姉さん。しかしこれが、「将棋」に対してどこまでも真剣な勝負の場での、当たり前の姿なのです。
最強の女流から手ほどきを受け、確実なレベルアップを果たした桂香。振り飛車を覚え、そして師匠・八一から、真剣勝負の心を教わったあい。
同門でありながら、バチバチと火花を散らす、そんなふたりの一局は、まったく見事な読み応えでした。素晴らしかったです。
それにしても、あいちゃんという才能はいったいどこまで行ってしまうのやら。空恐ろしいですね。


竜王、そのリフレはやばいっす。羨ましいけど。