まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

ねじ巻き精霊戦記 天鏡のアルデラミンIX

ストーリー
ようやく反乱分子の掃討を終え、国内を把握したかに見えた女帝シャミーユ。
今度はアルデラ教徒に不穏な動きがあることを知り、信頼厚いマシューとサザルーフに、ある任務を命じる。
しかし彼らの働きは、長い眠りから醒めたパトレンシーナによって筒抜けとなっていた……。



これがスパイの本気! とばかりにパトレンシーナさんが暗躍しまくる巻。
マシューやトルウェイも頑張ってるんですけど、それを遥かに上回るパトレンシーナさんの活動っぷりに震えてきます。
とにかくキオカ側にタレントが集まりすぎていて、帝国にまったく明るい未来が見えないわけですが、ラストで遂に立ち上がったアイツに期待するとしましょうか。


反乱を鎮圧した暴君シャミーユが次にマシューとサザルーフに命じたのは、怪しい動きを見せるアルデラ教徒たちへの内偵任務。
さすがは才気溢れる女帝というべきか、実際に「大脱走」を計画していた教徒たちのことを、このタイミングならば事前に止めることができたかもしれません……ハローマ・ベッケルさえいなければ。
いやあ、だってですね。ここまで結構な波乱万丈がありましたけど、その中でも欠片も妙なところを見せてこなかった彼女がですよ。まさか超々上級のスパイだったなんて、いかなシャミーユといえど、見抜けなくても仕方ないというものです。
表では笑顔で「ハロ」を演じつつ、裏で巧妙にマシューたちへの妨害工作を行い、そして「大脱走」を実現させてしまうこの手腕。恐ろしすぎる! 「騎士団」の5人の中でもその力量を最後まで隠してきただけのことはありますね……。


一方、「大脱走」した国民たちを追う中で、あのジャン・アルキネクスと密林戦を戦うことになってしまったマシューたち。
マシューの用兵は、他の将校らと比べても本当に見事で、イクタがいない中、一番頼りになるのは実は彼なんじゃないかと思わせる成長ぶりを見せてくれました。
しかし今回敵に回したのはかの「不眠の輝将」。唯一イクタと伍するかもしれない最強のライバル。そんな化け物を相手にして、しかも身内たる部下からも侮られていては……この結果もやむなしといったところでしょうか。まあ後者についてはジャンの側も同様のようですが。
もちろんサザルーフや、トルウェイの頑張りもあったんですけど、やっぱり今回輝いていたのは全体的にキオカの側。パトレンシーナを筆頭に、ジャンにエルルファイと、表裏問わずカリスマたちが活躍しまくりでしたね。
一方帝国が誇るカリスマは、2年前から閉じこもってばかり……でも今回ラストで、そんな彼にようやくの光が。
大事な人を守れなかった少年に、娘を守れなかった父親が告げた真実。なかなか胸にくるものがありました……。
決してあの悲しみを忘れたわけではない(読者だって忘れられない)けれど、今は、その悲しみを胸に立ち上がらねばならぬのだ。今こそがその時なのだ。
2年間黙り続けてきた英雄の帰還に、今から期待せずにはいられません。次巻が大いに待ち遠しいですね。


それにしてもこの表紙は怖すぎるのでは。