まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

灰と幻想のグリムガル level.7 彼方の虹

灰と幻想のグリムガル level.7 彼方の虹 (オーバーラップ文庫)

灰と幻想のグリムガル level.7 彼方の虹 (オーバーラップ文庫)

ストーリー
『黄昏世界』から脱出したハルヒロたちは、グリムガルとも異なる『太陽の昇らない世界』に足を踏み入れた。
異界の住民たちが住み着く村を発見し、ひとまずの安全を確保できたものの、過酷な環境に問題は山積みだった。
さらに最も必要とする「グリムガルに帰る方法」はまだ手がかりさえも見つからず……。



グリムガルでも黄昏世界でもない、日の昇らない第三の世界に取り残されたハルヒロパーティの、暗中模索の冒険を描いた第7弾。
いやあ、凄い。過去最高に先の見えない巻でしたね。何も知らぬ世界に彼らだけ、ただただ今日を生き抜くために試行錯誤を繰り返す壮絶な日々が描かれました。
果たして彼らはグリムガルへ帰ることができるのか……。不安感と緊張感に満ちた、読み応えのある1冊になっていました。


黄昏世界から命からがら逃げ出したハルヒロたちは、ララとノノの発見した道を通ってまた新たな世界へ。
そこは日が昇らず、ずっと暗い闇の世界。しかもララとノノからは置いていかれ、当然他に人間がいるわけもなく、完全にハルヒロたちのみ。
いや、この不安感は凄いですよ。今までは、たとえばダンジョンに潜っても、街に戻れば何かしら救いがありました。でも今度は、ダンジョンよりもわけの分からない場所に彼らだけで、どうにかして生き抜いていかなければならない。
運良く、顔を隠した謎の異界人たちの集落を発見するわけですが、もちろん異界人とはコミュニケーションもままならないわけで……。
だから、ちょっとした決断と冒険を繰り返して、生きるための方策を見つけていく。明日の水と食料が確保できるかどうかも分からない、そんな真にギリギリの生活に、読んでいるこちらまでもが緊張しきりでした。


ソウマやアキラといった強者たちと知り合いになったハルヒロたちですが、ここには、いざというとき守ってくれる人はいません。
果てしない孤独……だからこそ、心の支えになるのがパーティの仲間です。
ユメが喋るとほんわかするし、シホルはひとり頑張って新しい術を開発しちゃうし、メリイは相変わらず可愛い。クザクはなんだかんだ頼りになるし、ランタでさえ、彼がいなければきっと、みんな寂しく感じたことでしょう。まあ、大抵はウザくてたまらないわけですが、良くも悪くもムードメーカーには違いありません……。
そして、少しは生活が上手く回りだしたら、次に待ち受けているのは停滞です。何度となくハルヒロが悪い未来を想像するわけですけど、もちろん、ずっとこの世界にいるわけにはいかないわけです。グリムガルに戻ってくれないと困ります。進もう、先へ。ひと筋の奇跡を求めて。
とてつもなく困難に思えた、元の世界への道のり。いくつもの奇跡が重なって、可能性は高くないけれども、もしかしたら帰れるかもしれないチャンスがそこにある。
重要なのは、誰も失うことなく、それを達成できるかどうか。ラストの2章は燃えました。ううん、見事。


ここに来てシホルのヒロイン力が急激に高まっている。