まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

バビロン I ―女―

バビロン 1 ―女― (講談社タイガ)

バビロン 1 ―女― (講談社タイガ)

ストーリー
東京地検特捜部検事・正崎善は、製薬会社と大学が関与した臨床研究不正事件を追っていた。
その捜査の中で、毛や皮膚混じりの異様な血痕と、アルファベットの「F」で埋め尽くされた一枚の書面を発見する。
あまりに異質なその紙の出どころをたどり、麻酔科医・因幡信へと行き着いた正崎だったが……。



野崎まどだ。掛け値なしに野崎まどでした。私の! 好きな! 野崎まど作品でした!!
製薬会社の不正事件から、関係者の不審死、政治家の汚職と陰謀、と話がどんどん大きくなっていき、そして最後に浮かび上がる1人の「女」。
毎度ながら、鮮烈なキャラクターを生み出すのが本当に上手い。ゾワッとさせられました。


東京地検の検事・正崎と、彼の副官たる立会事務官・文緒。
彼らが追っていた製薬会社の事件の中で偶然発見された、血痕付きの不気味な紙。
初めこそ証拠集めの一環くらいのはずだったのに、人死にが出るわ、関係人物の中から大物政治家の名前が飛び出してくるわで、あっという間にスケールの大きな話へと広がっていきました。
自殺と思われた遺体も、明らかにおかしな状況だし、手がかりとなりそうな3人の女A、B、Cはなぜか容易に捕まってくれないし、何もかもが不自然で、違和感だらけの事件。
自らが信じる正義の下に意地でも悪を絞り出してみせようという正崎と、ああだこうだ言いつつも目標を持って仕事に励む文緒は、なかなか息が合っていて傍目にもいいコンビだったのですが、彼らが追いかけた悪は、想像を超える深さだったのです……。


事件の裏側で動いていたのは、一検事が取り扱うにはあまりに大きすぎるもの。
それでも諦めずに捜査を続ける正崎ですが、案の定というかなんというか、どんでん返しは一度では終わりませんでした。
壮大な計画の、さらに裏に潜んでいた巨大な闇、強大な悪。そしてその大本たる人間は、やはりあの……!
いえ、サブタイトルになっているくらいですから、「女」が鍵なのは分かっていたんですけどね。それでもやっぱり驚いてしまいました。野崎先生は、次元の違う存在というか、何かが決定的に異なる人間を描くのが、本当に好きなんだなと感じます。何気ないやりとりの中で、それとなくソレを描くのが、また上手いんだなあ。
終盤は息もつかせぬ展開の連続で、まさに怒涛のストーリーといったところ。一気に読みきってしまったのですが、風呂敷を広げまくったところで続いているので、残るのは謎ばかりです。
正義と悪、そして生と死を、「女」がどのように繋いでくるのか。ああもう、次巻が早く読みたくて仕方ありません。


こういう場面での、「カルミナ・ブラーナ」の鉄板ぶりときたら。