まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

いつか世界を救うために −クオリディア・コード−

ストーリー
西暦二〇四九年、突如として現れた正体不明の『敵』<アンノウン>と戦争を続ける人類。
防衛都市のひとつ神奈川の学園に転校してきた紫乃宮晶の目的は、神奈川序列第一位・天河舞姫を暗殺することだった。
しかし『最強』の称号を有し、人類の希望である少女の強さはあまりにも規格外で……。



シェアワールド「プロジェクト・クオリディア」の「神奈川編」。
神奈川序列第一位、すなわち最強の少女の暗殺を狙う主人公が、あの手この手で少女の「観察」に励むストーカー×異能×バトルストーリー。
あー面白かった! 神奈川最強の姫様と、その姫様のストーカーズ(主人公含む)という構図がなんとも笑える。
それぞれのキャラの異能を使ったバトルも迫力があって、コメディでもシリアスでも満足度の高い1冊でした。


政府直轄の特殊部隊に所属する主人公・シノ。彼が言い渡された任務は、<アンノウン>から神奈川を守護する最強の少女・舞姫の暗殺。
なぜ国を守る守護者を暗殺するのかも示されないままに任務に就いたシノですが、まずは暗殺対象の情報収集が大事ということで……覗きに追跡にゴミ漁りと、やってることは完全にストーカーのそれ。
彼自身は愚直に任務に励んでいるから、自分の行動がどれだけ変態染みているかまるで理解していないのがまた……。いや、彼の言い分では人を殺そうとしているのに犯罪も何もないということで、まあそりゃそうなんですけど、それとこれとはまたなんか違うだろ!
さらには、なぜかシノがストーカー行為をする先々で出会ってしまう、神奈川四天王のメンバーたち。
シノと同じく姫のストーキングをする音無、シノと同じく姫のゴミ漁りをする佐治原、シノと同じく覗きをする隠谷。彼女たちは完全に趣味でやっちゃっているので、もうこれ以上ないくらいにギルティなんですが、そんな彼女たちと本気で縄張りや姫の使用後グッズ、隠しカメラの設置場所などを張り合うシノの姿が、また笑えてしまいます。
日常的にこんな変態たちに囲まれているのに超天真爛漫で純粋に育った舞姫さん、ちょっとした奇跡でしょ……。


初めのうちこそ舞姫のことを暗殺対象としか見ていなかったクールなシノですが、観察を繰り返したり、実際に試合をしてみたり、デート(!)に行ってみたりと、舞姫の人柄に触れていくうちに、次第に彼女へ絆されていってしまいます。
舞姫はとにかく圧倒的に強いのですが、普段はとてもそんなことを感じさせずちょこまかと小動物的で、全くスレていなくて、本当に可愛すぎる! そりゃストーカーの2人や3人付いちゃうし、敵の暗殺者も情が移っちゃうよね、というものです。
ラスト、<アンノウン>の親玉へ舞姫とシノのふたりで戦いを挑む場面は、前半のコメディ部分が嘘のように熱くて格好良くて、震えちゃいました。
舞姫とシノの間に芽生えてしまった絆が、シノの任務にどう影響を及ぼしてくるのか。そして、舞姫の親友だったはずのほたるの真意はどこにあるのか。
上下巻の下巻に相当する次巻(本当はもっと続いてほしいのですが!)が、今からとても楽しみです。


イラストははいむらきよたかさん。とにかくバトルシーンの躍動感が素晴らしい。
舞姫も可愛くて最高でした。照れた表情がたまりません。


八重垣さん……。