まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

グランクレスト戦記 5 システィナの解放者(上)

ストーリー
同盟にも連合にも見切りをつけたテオたち連合領南部の諸国は、軍事協定“アルトゥーク条約”を締結。
同盟はヴィラールによる死を賭した抵抗に多くの戦力を失い、また占領地では遊撃隊のゲリラ戦に苦しんでいた。
テオとシルーカたちは、同盟と連合との戦いの間隙を突き、テオの故郷・システィナへと渡るのだが……。



巻を追うごとにどんどんスケールを広げていく剣と魔法のファンタジー叙事詩・第5弾。
今回も隙のない面白さ! 条約・同盟・連合の三大勢力が出揃った一方で、遂にテオの宿願・システィナ解放編が始まりました。
テオもシルーカもまだ未熟だから何もかもが完璧に上手くいくわけではないのですが、かといって決してストレスフルにはなりすぎない、ギリギリのバランス感覚が絶妙だと思います。


ヴァルドリンドを相手に孤軍奮闘したヴィラールもいなくなり、ますます窮地に立たされる連合。
そんな中、大陸の中央に、ラシックやテオたちを中心とした新陣営・アルトゥーク条約が誕生しました。二大勢力の隙を突いて参戦する新興勢力! 熱いですね!
ラシックは当然テオを盟主にと推薦するのだけれど、集まった君主たちが盟主にと望むのはラシックの方。ラシックに爵位を預けておく、なんて曖昧な態度を取っていたのが災いしましたね。
せっかく勢いに乗って新勢力を立ち上げたのに家柄なんぞに囚われて、まったく君主って奴らはこれだから……。まあ出世欲のないテオにとってはどうでもいいことなんでしょうけど、モレーノがデカい顔をするのは気に食わない(笑)。
戦場では、テオとマリーネが初めて顔を合わせました。愛に生きるテオと、全てを捨てて覇道に生きるマリーネ。対照的なふたりの主人公……。ん、アレクシス? 知らない子ですね?
いやしかし、マリーネへの挑発のためにテオが取った大胆な行動にはニヤニヤさせられました。もう、すっかりラブラブですな。怒りながらも満更でもなさそうなシルーカが超可愛い。見せつけてくれるじゃんよ!


戦いが一段落したところで、念願の故郷・システィナを救う旅へ。
ロッシーニ家による「よくできた」圧政は予想以上に堅牢で、住民を救いたいと思ってやっているのにその住民からも邪魔者扱いされて、苦しい展開が続きました。ようやく成果が出たと思いきや、それは犠牲の上でようやくもぎ取ったものだったりして、なかなか上手くはいかないものです。
馬鹿正直なテオの姿勢は好感こそ持てるものの、このまま泥臭い抵抗を続けても、何かが劇的に変わるかというと……うーん、というところ。
個人的には、そろそろシルーカの活躍が見たいのです! 恋愛方面では大いに楽しませてもらっているけれども、戦いに関していえば、1巻以来わりと地味な立ち位置に収まってしまっていますから、ここらで一発またその知性を披露してもらいたいなと。期待してもいいかな。ともあれ、次巻も楽しみです。


外伝「エーラムの恋」が切なすぎるんだけど、どうしてこうなった……。