まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

ウィッチハント・カーテンコール 超歴史的殺人事件

ストーリー
皇帝から依頼され、千年前の女王の謎を解き明かす任務についた『魔女狩り女伯』ルドヴィカと新米騎士ウェルナー。
しかしその調査の最中、密室かつ衆人環視の遺跡内で炎による殺人事件が発生してしまう。
魔女の手によると思われるこの事件に挑むルドヴィカだが、彼女の前に異端審問官の少女・エルシリアが立ちはだかり……。



第1回集英社ライトノベル新人賞<優秀賞>受賞作品。
魔女が起こした殺人事件と、千年前の女王の奇跡の謎を解き明かすファンタジーミステリー! みんな大好きファンタジーミステリーだよ!
別々と思われていたふたつの事件が、思わぬやり方でひとつに繋がっていく展開に目を見張りました。副題の「超歴史的殺人事件」に偽りなしですね。
天才・ルドヴィカと、彼女を陥れ殺そうとするライバル・エルシリアとの対立が壮絶で、見応えがありました。


千年前に在位していた伝説の女王。彼女による奇跡を調査するべく訪れた旧王都で突如起こった殺人事件。
明らかな密室状態だったことから、魔女の仕業によるものだと決めつける異端審問官・エルシリア。
ミステリー要素ももちろん面白かったけれど、それ以上にグッと来たのは、エルシリアとルドヴィカの命を賭けた推理対決ですね!
かつて親友だったというふたり。そして、ある時を境に真逆の道を往くことになったふたり。
状況証拠からルドヴィカを犯人の魔女に仕立て上げ、かつての親友を処刑しようとするエルシリアの残虐さが実に腹立たしいけれど、彼女なりの正義を追いかけた結果がこれなのだと思うと、なんだか切ない気持ちにさせられます……。


ルドヴィカは天才だけれど、異端審問官の肩書きを持つエルシリアと比べれば、力を持たないただの一研究者にしか過ぎません。
そんな彼女の力となったのが、優等生だけれど主体性のない新米騎士・ウェルナー。
周りの声にひたすら応え続け、ただ偉大な兄の後を追いかけるだけだった彼が、その兄に背いてもルドヴィカのために戦うことを選んだ姿は胸を熱くさせてくれました。かっこいいぞ少年!
もうダメだというくらい追い詰められた状況を一気に覆して事件の全貌をつまびらかにしていく爽快感。そして予想外の真実。
正直頭がこんがらがってよく分かっていない部分もあるのですが……ハッタリが上手いからか、なんか驚いちゃったから、まあなんだ、負けましたよ……。
果たしてこの作品に続きはあるのでしょうか。個人的にはルドヴィカとウェルナーの今後をもっと見てみたい気もします。続刊にしろ新作にしろ、楽しみに待ちたいと思います。


イラストは文倉十さん。この素朴な絵柄が、本当にこういう中世ファンタジーに合うんですよね。
口絵のエルシリアの表情がいい!


しかしある意味一番意外だったのは、被害者があの人だったことですよ。