まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

イケニエハッピートリガー

イケニエハッピートリガー (MF文庫J)

イケニエハッピートリガー (MF文庫J)

ストーリー
ある日夢の中に現れた「カミサマ」から救済と称して超能力を与えられた人類。
その代償は1人の「イケニエ少女」を「幸せ」にして「殺す」ことだった。
それから数年後、超能力を得た人類が住む街に、異世界から普通の男子高校生・高松裕がやってきて……。



第10回MF文庫Jライトノベル新人賞<審査員特別賞>受賞作品。
全世界の人類のためにイケニエになることを強制された女の子と、彼女を幸せにすると決めた少年のボーイミーツガール。
なんともエグい設定のお話でした。世界を取るか彼女を取るか、そんな選択だけでも苦しいのに、彼女を幸せにしたら死んでしまうというのがまたキツい。
何も知らない主人公がヒロインに笑顔をもたらすたびに、どんどん嫌な結末へと近づいているようでなんとも言えない気分にさせられました。


ヒロイン・エルの孤独な生きざまがなんとも切ないです。
自分が死ねばみんなは助かるけれども、そのためには幸せにならなくてはいけなくて、でもそんな状況で幸せを感じるのはやっぱり難しいことで。
そんな中で、自分のことを何も知らない男の子と出会って交わした約束が、“私を幸せにすること”っていうんだから、もうなんというか、辛すぎる!
エルがどんな気持ちでこの約束を切り出したのかと思うと悲しくなってきます。
しかも主人公・裕は彼女のことを知らないから、あっけらかんと「幸せにする」とか約束しちゃうわけで……なんなのこの不幸しか呼び込まない出逢い……。


エルのことを捕まえて幸せにしようとしている超能力者たちも、一緒に過ごしてみれば気のいい奴らでした。
エルが死ななければみんな死んでしまうから、仕方なく彼女を追いかけることしか出来ない少年少女。
「カミサマ」の気まぐれさえなければ、こんな運命に振り回されることもなく、もしかしたら普通にエルと仲良く過ごせていたかもしれないのに。


どうあがいてもハッピーエンドが見込めないストーリーですが、ここからどう展開が動いてゆくのか、気になって仕方がありません。
というか思いっきり“続く”で終わっているので、早く続きを! お願いします!


イラストはらいかさん。この表紙は吸引力があっていいですね。目線がいい。
モノクロでもエルが表情豊かに描かれていて可愛かったです。


エロに(そこそこ)寛容なヒロインっていいなあ……。