まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

魔法の子

ストーリー
七十年前突如発現した人類の新しい力、魔法。
魔法を疎む相馬アキラは、失ったはずの魔法の力の復活を確認され、防衛型教育都市“時島”へ連行されてしまう。
そこで妹の凛と五年ぶりの再会を果たし、自身の世話係となる桜田ノアと出会うのだが……。



人間が皆魔法を持って生まれてくる世界での、魔法嫌いの少年と魔法を尊ぶ少女のボーイミーツガール。
面白かったです。出会ったときには真逆の考えを持っていた主人公とヒロインが、一緒に過ごす中で少しずつお互いを理解していく、という流れが丁寧に描かれていたと思います。
色々と謎多き作品ですので、そのうち何かとんでもないことが起きそうな予感が、なんとなく。


いつ魔法が消失するかということに戦々恐々としながら日々を過ごす時島の生徒たちの姿がリアルに映りました。
アキラにとっては無用でも、生まれつきその力を持って生活してきた彼らにとってはなくてはならないものです。
でも毎年1割の人間から魔法が失われるということは、遠からず自分にもそのときがやってくるということで、彼らは常にその不安につきまとわれているはずです。だからこそ魔法が復活したアキラをやたら明るく歓迎したり、その復活の方法を聞いてきたり。
表面上は明るく振る舞っているけれど、その裏に見え隠れする魔法への執着に、なんとも言えぬ歪さを感じました。アキラがすぐに耐えられなくなったのも、さもありなんといったところ。


アキラもノアも重い過去を背負っています。本当はそれは、それぞれが孤独に抱えていたはずのもの。でもふたりは出会ってしまいました。
もしここで出会わなかったら、どちらもそう遠くないうちに潰れていたかもしれません。共に背負うとまでは言わなくとも、自分のことを知る、信頼できる相手が見つかったことは、彼らにとって大きな出来事だったろうと思います。
まさに運命的な出会い。ボーイミーツガールはこうでなくてはいけませんね。
さすがに「魔法の子」の意味には驚かされましたが、ラストシーンは魔法の描写やイラストも含めてかなり爽快感がありました。
気になるのはやはりアキラの妹のことですかね。凛と、それからもうひとり。彼女たちがストーリーにどう絡んでくるのか、今から楽しみです。


イラストはNOCOさん。細やかなタッチが魅力的なイラストですね。
特に上にも書いたラストシーンというかラストバトルの1枚は、背景の広がりを感じさせてくれる素晴らしいものでした。


凛が主人公のお話も読みたい。