まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

神曲プロデューサー

神曲プロデューサー

神曲プロデューサー

ストーリー
売れないスタジオミュージシャンながら、音楽配信サイトでたまたまデイリー1位を取ってしまった蒔田シュン。
彼のシングルが1日だけトップから蹴落としたのは、日本を代表する歌姫・海野リカコの新譜だった。
そのことがきっかけで、シュンはリカコから興味を持たれるようになり……。



雑誌に連載された短編をまとめた単行本。杉井先生の音楽ものと聞いたら読まずにはいられません。
もう読む前から面白いことは分かってたんですけど、読んでみたらやっぱり面白かったです。ちくしょう悔しい(満面の笑みで)。


主人公は30歳のスタジオミュージシャン・シュン。スタジオミュージシャンというものがどういう仕事なのかは知りませんが、音楽関係のこまごまとした仕事をして生活している様子。決して売れっ子ではありません。
そんなシュンがひょんなことから知り合うこととなった日本最高の歌姫がヒロイン・リカコです。
知名度も実績も才能も、なにもかもがかけ離れているふたり。まさに凸凹コンビといった具合ですが、だからこそ妙にカチッとはまる掛け合いが楽しい。
シュンとリカコに限らず、キャラ同士のやりとりはどれもセンスに溢れていて、もうこれだけで読んでよかったなと思えてしまうから、もうやんなっちゃいますよね!


リカコがやたら可愛いです。バツイチなのに! なんでこんな可愛いの!
明らかに実在する某歌手をモデルにしているんですが、思わずその歌手のアルバムを買ってしまいそうになるくらい可愛いです。本人が読んだらどんな顔するんだろう。
天真爛漫で無邪気で距離感が近くて、言ってしまえばあざといんですけど、こういう女に弱い男は一定数いるものです。私も弱いです。すみません。
シュンとリカコとの恋愛はメインテーマではないと思うんですが、物語の重要なポイントできゅんとする描写がちょいちょい出てきて、ほっとため息をついてしまいます。お互いに社会人だし、元カノ元カレもいるけれど、大人の恋愛というほど成熟していない、微妙な間柄がたまらなくくすぐったい。
その点で「恋愛論パッサカリア」はやっぱり好きな短編です。リカコの元旦那との会話とか最高でした。シュンの知らないリカコの顔を知っている男性に対して湧き上がってくる、くすぶるような気持ちが変に快感ですね。あ、Mではありません。


成功と失敗。厳然とそびえ立つ才能の壁。
どれだけ打ちのめされても、結局はまた歩き出すしかありません。なぜならそういう人生を選んでしまったから。
シュンとリカコの今後がどうなるのかは分かりませんが、最終話「不可分カノン」で語られていることはほんの少しで、正直物足りなさも感じているので、続いてくれるといいなあと思います。リカコが危うい子すぎるんだけれど、結婚できるのかなこのふたり……。


お互いに背中を預けているような表紙イラスト、素晴らしいですね。