まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

月花の歌姫と魔技の王Ⅲ

月花の歌姫と魔技の王III (HJ文庫)

月花の歌姫と魔技の王III (HJ文庫)

ストーリー
家庭教師のため、いつものようにイルゼシュタイン城を訪れるライル。
ところがイルザの策略にはまり、そのまま行楽地・ヘクセンブルグへと連れ出されてしまう。
やってきたヘクセンブルグでライルは、師匠エルルーアの最初の工房を発見するのだが……。



王女様、抜け駆けをするの巻。
表紙がイルザ様とツェツィーリアだったので期待してたのですが、振り返ってみるとさしてイルザ様の出番が多いわけでもなくちょっぴり残念。
でもツェツィーリアの方は、ルーナリアとマリーアがいないのをいいことにわりとしっかりイベントをこなしていたようです。ほとんどイルザ様の差し金でしたけど。
ライルとツェツィーリアをくっつけたがるのもいいけれど、もっとイルザ様自身で攻めに行ってもいいのに! なんて思うのでした。


一方、抜け駆けされたルーナリアとマリーアの動揺っぷりには思わず笑ってしまいます。
特にマリーア。あんたどんだけライルに依存してるんですか。ちょっと落ち着け。
当然ふたりはライルを追いかけるわけですが、列車でのルーナリア&マリーアvs『牙の血族』の戦いは迫力があって良かったです。列車バトルはロマンですね。
あの手この手で幻想種と渡り合うマリーアもさることながら、やはり『霧の血族』の末裔ルーナリアの戦いぶりには胸が震えます。格好良い。
ライバル同士ながらお互いを高め合うふたりの絆も一層強固なものになっていて、相変わらず素敵なダブルヒロイン像でした。こんなふたりを繋いでいるのがライルへの恋心なんだと思うとなんとなくむかついてしまうのですが……。すみません嫉妬です。


恋愛面に限らず、ライルは何かと鼻につく主人公だと思います。なんてったって天才ですから。天才には敵が多いものですから。
今回の敵キャラもいかにもな小物臭を発していて、悪いけれどとてもライルには勝てそうには見えなかったのですが、彼の気持ちも分かるような気がします。
鼻歌でも歌うかのように次々と画期的なアイデアを出してみせ、困っている人がいたら一も二もなく助け、それでいて自分を全く誇らず飄々としている。自分のことを偽善者だと本気で信じている。
まったく完璧な人間ですが、だからこそ嫌味に思えてしまうということもあります。少し調子に乗っているところでも見せてくれれば可愛げがあるのに。
ルーナリアやマリーアが、ライルに惹かれつつも常に怒っている様子なのは、このあたりにも理由があるのかもしれませんね。
さあ、どちらが先にライルの弱点を引っぱり出すことになるのやら、妙にわくわくしてきました。


ライルが見せた本気の力、《最後の魔女の遺産》、陰謀と復讐などなど、謎と伏線はまだまだ尽きません。
しかし何より気になるのは最後の断章でのルーナリアのこと。
もうこんなことになるというのは正直意外でしたが、ここまで来たら立ち止まってはいられませんよね。マリーアのことだってあるのだしね。
急展開を見せる物語にさらなる期待が高まります。次巻も楽しみです。


マリーアの妄想の内容で番外編書いてくれませんかね!(興奮)