まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

ねじまき精霊戦記 天鏡のアルデラミンⅡ

ストーリー
実戦経験を積むため、北域へと出張することになったイクタたち。
目指すは、大アラファトラ山脈に守られた帝国最北の軍事拠点、北域鎮台。
野盗の相手と山岳民族「シナーク族」の監視以外は総じて暇だと噂される基地だったが……。



読み終わってしばらく、気分がずんと沈み込みました。
いや、面白い。確実に面白いんだけれど、でも、やっぱり戦争を描いている以上、やっぱり明るくて清々しいばかりの読了感とはいかないようです。
1巻ではまだ、本格的な戦争はありませんでしたから、気を抜いていた部分がありましたが、今後はこういった展開が増えてくるのだろうと思うと、自然ページをめくる手が重くなってきますね。


客観的に見て、明らかに帝国軍の側に非がある戦争でした。
傲慢で嗜虐的で差別主義の上官に付き従い、地方民族の民たちを焼き尽くしていく非道の軍隊。
しかし、いくらサフィーダ中将に対して反感を覚えようとも、命じられれば、イクタたちは戦いに赴くことしかできません。完全に上意下達の組織というのは、嫌なものですね。
自分の欲にだけ忠実な中将が、笑いながら始めてしまった戦争のせいで、こんな気分を味わわされる。なんとも許しがたい。
まあ、北域に到着したときからもう、不穏な空気がプンプンでしたからね。ある程度は覚悟していましたけれどね。それにしたってね……。
イクタの優れた指揮と科学の知識、ヤトリの圧倒的な戦闘能力で、どれだけ見事に敵を討ち果たしたとしても、気分は晴れてくれません。


イクタやヤトリほどではありませんが、今回も仲間たちの活躍がしっかり描かれていて良かったです。
トルウェイは新たな武器を手に入れて向かうところ敵なしという感じだし、ハロはもう、そこにいるだけで癒されますね! 天性からの衛生兵と言えましょう。
そしてマシュー。彼はどうしても、イクタやトルウェイと自分を見比べて卑屈になりがちですが、他ならぬイクタが、そんなマシューの長所を気付かせてくれました。
決して派手ではないけれど、彼もかけがえのない「騎士団」の一員なのです。
堂々と表紙に描かれていたのでシャミーユ殿下の活躍にも期待していたのですが……今回はお預けということで。


嫌な戦争がようやく終わったと思ったら、また新たな戦争の予感が。
当人の意志に関係なく、戦争の英雄というものは、戦いに巻き込まれてしまうものなのでしょうか。
せめて次はもう少し、悲劇の少ない戦いであってほしいものですが、淡い期待かもしれません。
ともあれ、息をつかせぬ急展開に、次巻が待ち遠しくて仕方ないですね。楽しみです。


いい人から順にいなくなっていくというフラグ……?