まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

氷菓

氷菓 (角川文庫)

氷菓 (角川文庫)

ストーリー
何事にも積極的には関わろうとしない“省エネ”少年・折木奉太郎
姉からの手紙にそそのかされ、消滅寸前の古典部に入部した奉太郎は、部室でひとりの少女と出会う。
千反田えると名乗ったその少女は、「一身上の都合」により古典部に入ったらしいのだが……。



ずっと読みたいと思いつつ手が出せずにいた作品。ミステリーということもあり、アニメでネタバレを食らうわけにはいかないと思い、ようやく読む決心がつきました。放送前になんとか読めて良かった……。
本当は、どうせならスニーカー文庫版で読みたいと思っていたのですが、手に入らなかったので仕方ないですね。
アニメに合わせたデカ帯(ほぼかけかえカバー状態)版がちょうど出たので、そちらで読みました。千反田ちゃん可愛い。


ジャンルは学園日常ミステリー。期待していた通りに面白かったです。
章立ては短めで、ひとつの章でひとつ謎を解いたり、3章くらいにまたがって大きな謎をひとつ解いたり。
短編的に小さな謎解きが次々と披露されるから飽きないし、それでいて1本の大きな流れがある物語構成になっているので、長編としても楽しめますね。
あんまり数は読んでいませんが、日常ミステリーは好きです。殺人事件が起こるような推理小説よりも、もしかしたら好きかもしれません。
なんでしょうね、キャラクターこそ多少特殊だったり、変わり者だったりしますけれども。
それ以外はごくごく普通で、ほんとにその辺に転がっていてもおかしくないようなちょっとした不思議を、ちょっとしたひらめきで淡々と解決していくストーリーが、なんとも心地よいのですね。
謎であるうちは不思議でたまらなかった謎も、一度解き明かされてしまうと意外なほどあっけないタネでしかなくて、少々拍子抜けすることもしばしばです。
でも、私たちが世の中で接することのできる不思議なんて、実際のところ、大抵そんなものなんじゃないかなあと思います。
もし高校生に戻れるのなら、こんな部活に入って、こんな不思議と出会ってみたいものですね。


4人登場するメインキャラたちは、それぞれ役回りがはっきりしていて分かりやすい。
千反田が謎をテーブルの上に乗っけて、そこに里志や伊原がヒントをもたらして、最終的に奉太郎が解く。
何事につけてもいまいちやる気を見せず、面倒ごとはとことん避けるような生き方をする奉太郎が、なしくずしに謎に取り組むことにさせられてしまっているのがなんとも面白いですね。
文集『氷菓』の一件に至っては自分から動き出すような態度まで見せてくれちゃって、これも千反田の卓越した巻き込みスキルによるものなのでしょうか?
物語の初めでは灰色と称された奉太郎ですが、古典部での活動を通して、彼なりの新しい色を学園生活に見出してきているのではないかと思います。
まあ、生き方なんて自由ですけど、一生に一度の青春ですし、個人的にはやっぱり彩度のある日々の方が楽しそうに見えるので、奉太郎にはもっともっと、千反田に巻き込まれていってもらいたいところです。


このオチには思わずニヤリ。お姉様は色々な意味で、一番気になる人物ですね。
いやしかし楽しかった。200ページ強しかないわりに溢れる満足感。読みたかったものがやっと読めたからかもしれませんけれども。
続刊「愚者のエンドロール」の評判も耳にしているので、早いところ(アニメに追いつかれる前に!)読んでしまいたいと思います。


千反田のくしゃみにいちいち萌える。