まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

ミニッツ 〜一分間の絶対時間〜

ミニッツ ~一分間の絶対時間~ (電撃文庫)

ミニッツ ~一分間の絶対時間~ (電撃文庫)

ストーリー
私立穂尾付学園高校一年一組クラス委員長・相上櫻は、一分間だけ相手の心を読める『ミニッツ』能力の持ち主。
一年生にして生徒会長になるという野望のため、能力を利用し、周囲から好意を持たれるようにクラス内で上手く立ちまわっていた。
ある日、生徒会副会長の琴宮遙にとある秘密を知られてしまった櫻は、なんとかして彼女の弱みを握ろうと画策する……。



第18回電撃小説大賞<選考委員奨励賞>受賞作品。
キャッチコピーは「トリックとロジックが交差する、学園騙し合いラブストーリー!」とのことですが、まあ大体合ってるかな?
前半と後半でお話の内容や趣旨がだいぶ変わっていたように思うんですけどね。前半はおおよそ、上記の文句の通りの内容でした。
櫻や遙を始めとしたキャラたちによる、騙し騙され、嘘をつき、そして見抜かれ、といった丁々発止のやり取りが楽しいですね。
アクセントとしてミニッツ能力があるけれど、それがあっても常に櫻が勝つというわけではないところに奥深い面白みを感じます。


キャラクターたちは揃いも揃って個性派だらけでした。
まずは主人公の櫻ですけど、結構な腹黒。腹黒主人公って見ていて楽しいですよねえ。
人当たりのいい優等生を演じつつ、裏では自分の地位のことしか考えていないナルシストっぷり。
ともすれば厭味ったらしい奴にも見えるけれど、肝心の部分で抜けていたり、女の子の色香に弱かったり、自分では全部上手く回っていると信じているわりに、傍からは空回りして墓穴を掘っているようにしか思えないところもあったりして、意外と憎めない子だと思います。
そんな櫻の前に立ちはだかった敵・遙。もう出てきた瞬間から分かりました。ああ、似たもの同士だと。
裏に一物を秘め、それを決して表に出さないように余裕の仮面をかぶり続けている。無駄に自信満々で、負けず嫌い。本当に櫻とそっくりです。
それだけに、櫻と遙による、嘘や建前や立場を駆使した弁論バトルは実に楽しい。
自分の嘘が嘘だと見抜かれていると知った上で、最後までブレずに意地を張り通せるのか否か。後には引けない戦いがここにある。


櫻と遙がもっぱらの中心だった前半からガラッと変わり、後半では遙の妹・彼方を巡る話へ。
てっきり遙とのバトルが続くものと思っていたので、この展開には少々意表を突かれました。騙し合い要素は少ないけれど、これはこれでまた面白いですね。正直、少しちぐはぐな印象があることは否めませんけれども。
登場時はただの気弱な女の子に見えた彼方ですが、さすがは遙の妹というべきか、並々ならぬポテンシャルを秘めていたようで。
今にも壊れてしまいそうな危うさが怖い。遙が誰にも触らせないように守っていたのも分かる気がする。
櫻も、遙も、彼方も、みんなそれぞれの闇を持っていて、簡単には救われないのかもしれません。
でも、同じような痛みを抱えた彼らが一緒に手を取り合うことで、少しずつ良くなっていくこともきっとあるのでしょうね。


話は一段落したようでいて、未解決の問題はまだまだ残されているし、アザミや茉莉、夏凪などは未だ本領を発揮しているようには思えません。
対決の結果はもちろん、奇妙な三角関係、もっと言えば櫻と遙の今後も気になります。なんだかんだでこのふたりの関係はかなり好きなんですよね。早く続きが読みたい。
あらすじやピンナップであれだけ強調されていた「馬鹿と天才ゲーム」はもっと行なわれて然るべきだと思うので、そのあたりにも期待しています。


イラストはゆーげんさん。ううむ、このツヤツヤ感がやっぱりいいなあ。
茉莉がいちいちエロくてとても美味しい。ごちそうさまです。


作中に登場する作者自作曲はこちら→【初音ミク】大きな宇宙の樹の下で【オリジナル曲】 by OTO VOCALOID/動画 - ニコニコ動画。耳に残る曲でした。